HEALTH WORDS / 用語解説
ディスインテグリン
Disintegrin
ディスインテグリンとは、主としてマムシやガラガラヘビなどのヘビ毒中に見出される、血小板の凝集を強力に阻害する低分子量のタンパク質ファミリーである。1
ディスインテグリンはヘビ毒のプロテアーゼ(メタロプロテアーゼ)の前駆体遺伝子の一部としてコードされており、タンパク質分解酵素ドメインの加水分解やプロセシングによって遊離生成される。1
その最大の特徴は、アミノ酸配列中にインテグリン認識配列であるRGD配列(Arg-Gly-Asp)やそれに類似したループ構造を保持している点である。1
血小板の膜表面にはフィブリノーゲン受容体であるインテグリンの一種GPIIb/IIIa($\alphaIIb\beta3$)が発現しており、血液凝固の際にフィブリノーゲンと結合して血小板同士を架橋し凝集を引き起こす。1
ディスインテグリン分子内のRGD配列は、フィブリノーゲンに先立ってGPIIb/IIIaなどのインテグリンに対して極めて高い親和性で競合的に結合するため、血小板の凝集反応が特異的に阻止される。1
この阻害作用により、ヘビ毒に曝露された生体では血液凝固能が著しく低下し、出血傾向や循環器系の障害が引き起こされる。2
また、ヘビ毒由来の分子だけでなく、生体の細胞外マトリックス代謝や細胞接着に関与するADAMファミリーやADAMTSファミリーといったメタロプロテアーゼの分子内にも、構造および機能的に関連するディスインテグリン様ドメインが存在している。1
これらの内在性タンパク質は、細胞と細胞外マトリックスの相互作用の制御、受容体を介したシグナル伝達、さらには血管新生の調節など、多様な生理的および病理的プロセスにおいて重要な役割を果たしている。1
ディスインテグリンのもつインテグリン拮抗作用と高い特異性に着目し、血栓症治療薬の分子設計やがん細胞の浸潤・転移を抑制する抗腫瘍薬の開発研究において、強力なリード化合物あるいは構造模倣のテンプレートとして広く応用されている。1