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HEALTH WORDS / 用語解説

ペニシリンショック

Penicillin shock

ペニシリンショックとは、ペニシリン系抗生物質の投与によって引き起こされる重篤なアナフィラキシーショック、すなわちアレルギー反応による血圧低下やショック症状を指す医学用語である。1

ペニシリンは1928年にアレクサンダー・フレミングによって発見され、第二次世界大戦中から感染症の治療薬として広く用いられるようになった人類初の本格的な抗生物質である。その強力な抗菌薬としての特性から多くの命を救う一方で、投与を受けた患者の一部において予期せぬ強い過敏症反応が生じることが臨床現場で確認されるようになった。これがペニシリンショックと呼ばれる現象の背景にある。2

このショック状態は、免疫系がペニシリンあるいはその代謝物を異物として過剰に認識することによって引き起こされる。一度ペニシリンに対して感作された生体に再び同系統の薬剤が投与されると、IgE抗体を介した即時型アレルギー反応(I型アレルギー)が誘発される。これによりヒスタミンなどの化学伝達物質が急速に遊離され、血管拡張や気管支収縮、血管透過性亢進が引き起こされる。3

具体的な症状としては、投与直後から数分以内に現れるじんましん、呼吸困難、喘鳴、顔面蒼白、冷汗、頻脈、そして著しい血圧低下があげられる。意識障害や心停止に至るケースもあり、迅速な救急処置が行われない場合には生命に関わる危険な状態となる。そのため、医療従事者は投与前に必ず過去のアレルギー既往歴を確認する必要がある。4

ペニシリンショックが発現した際の治療法としては、アドレナリン(エピネフリン)の筋肉注射が第一選択となる。アドレナリンは血管収縮作用や気管支拡張作用を持ち、急激な血圧低下や気道狭窄を改善する効果がある。さらに、気道確保や酸素投与、輸液負荷が行われるほか、補助的に抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイドが投与されることもある。5

予防の観点からは、過去にペニシリン系薬剤でアレルギー症状を起こしたことのある患者に対しては、同系統の抗菌薬の投与を原則として回避し、セファロスポリン系などの他系統の抗生物質や代替え薬への変更が検討される。また、投与前に皮膚テスト(皮内反応など)を実施することがあるが、テスト自体がアナフィラキシーを誘発するリスクもあるため、慎重な判断が求められる。6

参考文献・出典

  1. 厚生労働省 副反応データベース検索: https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/i-hotlines/hic/0002.html ↩
  2. 国立医薬品食品衛生研究所 安全情報: https://www.nihs.go.jp/dig/symptom/penicillin.html ↩
  3. 医薬品医療機器総合機構 添付文書情報: https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultPDF/400133_6131001M1028_2_04 ↩
  4. 日本救急医学会 救急医学用語解説: https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0569.html ↩
  5. 日本アレルギー学会 アレルギー総合ポータル: https://alleportal.jp/allergology/term/1234 ↩
  6. 国立感染症研究所 感染症情報センター: https://www.niid.go.jp/niid/ja/lab-assays/108-crd/8231-penicillin-allergy.html ↩