HEALTH WORDS / 用語解説
ポリグリセリン脂肪酸エステル
ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンが複数分子重合したポリグリセリンと、脂肪酸とをエステル化した界面活性剤(乳化剤)の一種であり、食品添加物や化粧品の成分などとして幅広く利用されている化合物である。1
本物質は親水性の部分であるポリグリセリン部分と、親油性の部分である脂肪酸部分を同一分子内に併せ持っているため、水と油のように本来は混ざり合わない物質を乳化させる能力に優れている。2
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造上の大きな特徴は、結合しているポリグリセリンの重合度や、結合する脂肪酸の種類、およびそれらのエステル化の度合いを変えることによって、極めて多様な性質を持つ製剤を設計できる点にある。3
これにより、高い親水性を示すものから高い親油性を示すものまで、用途に応じた様々なHLB値(親水親油バランス)を持つ界面活性剤として製造することが可能となっている。4
食品の製造分野においては、その高い安全性と優れた乳化安定性から、飲料、デザート類、パン類、マーガリンなど、多岐にわたる加工食品の品質保持や物性調整の目的で食品添加物として使用されている。1
特に、油分と水分が分離しやすい乳製品類似の食品や、微細な乳化粒子を安定して維持する必要がある清涼飲料水などの製品において、分散剤や起泡剤としての役割を果たしている。2
安全性に関する科学的評価については、国内外の公的機関や専門家組織によって継続的に毒性学的な試験が実施されており、適切な摂取量の範囲内において人体に対する安全性が確認されている。1
ヒトが経口摂取した場合には、消化管内においてリパーゼなどの消化酵素によってポリグリセリンと脂肪酸とに加水分解されるため、代謝の過程を経て通常の脂質や糖代謝の経路に取り込まれ、体外へ排泄されることが知られている。4
また、遺伝毒性や発がん性、あるいは生殖毒性に関する各種の安全性試験の結果からも、食品添加物としての許容量を守って使用する限りにおいては、健康被害を引き起こす懸念は低いと評価されている。1
このように、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、化学的な多様性と高い生体適合性を兼ね備えた合成化合物であり、現代の食品工業や化学工業において不可欠な機能性素材の一つとして位置づけられている。2
参考文献・出典
- 内閣府 食品安全委員会: https://www.fsc.go.jp/sonota/food_additives/polyglycerin.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/food/syokuhin_kanshi/index.html ↩1 ↩2 ↩3
- 農林水産省: https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/food_poison/index.html ↩
- 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/osh/index.html ↩1 ↩2