ホームリン酸三カルシウム

HEALTH WORDS / 用語解説

リン酸三カルシウム

リン酸三カルシウムとは、化学式がCa3(PO4)2で表されるカルシウムとリン酸の塩であり、生体親和性に優れた無機化合物である。1

リン酸三カルシウムは、自然界ではミネラルの一種として存在し、特に哺乳動物の骨や歯の主要な無機質成分であるハイドロキシアパタイトに近い性質を持つことから、医療分野や歯科分野において極めて重要な生体材料として広く応用されている。2

臨床においては、その優れた生体適合性と骨誘導能、あるいは骨伝導能を利用して、骨折や骨腫瘍の切除後などに生じた骨欠損部を補填するための人工骨や骨補填材の主成分として使用される。1 リン酸三カルシウムを主成分とする人工骨は、生体内において周囲の骨組織と直接結合し、時間の経過とともに破骨細胞によって吸収され、最終的には自己の新生骨へと置換されていく優れた生体内吸収性を有しているという特徴がある。2

また、歯科領域においても、歯槽骨の再生やインプラント治療における骨補填の目的で、単独あるいはハイドロキシアパタイトなど他のカルシウム化合物と混合した形で利用されている。1

さらに、食品分野においてもリン酸三カルシウムは重要な役割を担っており、食品添加物としてpH調整剤や結着剤、栄養強化剤、あるいは粉末食品の固結防止剤などの多様な目的に使用されている。3 ヒトの体内におけるカルシウムおよびリンの供給源としても機能し、安全性に関する各種の評価を経た上で、適正な基準の範囲内で様々な加工食品に配合されている。1

化学的・物理的な特性としては、白色の粉末であり、水にはほとんど溶けない難溶性の性質を示すが、酸には溶解しやすいという特性を持っている。1 製造工程や焼成条件によって、結晶構造の異なるいくつかの相が存在することが知られており、特に医療用の生体材料として用いられる場合には、その結晶相や気孔率、機械的強度などが組織の治癒プロセスや吸収速度に大きな影響を与えるため、厳密な品質管理が求められる。2

このように、リン酸三カルシウムは基礎科学から臨床医学、そして毎日の食生活を支える食品加工に至るまで、幅広い分野において深く関与している極めて実用性の高い化合物である。3

参考文献・出典

  1. 国立医薬品食品衛生研究所 安全性情報データベース: https://db.nihs.go.jp/kensoku/pdf/373.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 審査報告書: https://www.pmda.go.jp/drugs/2012/D20120055/18029000_22400AMX00234_A101_1.pdf ↩1 ↩2 ↩3
  3. 厚生労働省 既存添加物名簿収載品目リスト: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kijun/other/kizon/kizon_mokuroku.html ↩1 ↩2