HEALTH WORDS / 用語解説
対称性
Symmetry
対称性とは、ある系に対して何らかの操作を行った前後で、その系が不変である性質のことをいう。1
医学や生物学の領域において、対称性という概念は分子構造から個体レベルの形態学、さらには生態系に至るまで、極めて普遍的かつ重要な役割を果たしている。2
例えば、生体を構成する多くのタンパク質や核酸などの生体高分子、あるいは医薬品の分子においては、その立体的な対称性が受容体との結合親和性や薬理作用を決定する上で決定的な要因となる。3
特に鏡像異性体に代表されるような空間的な対称性の欠如や非対称性は、生体内における酵素反応の基質特異性や薬物代謝において厳密に区別されるため、創薬科学の分野では極めて重要な物性として扱われている。2
また、解剖学や発生学の観点からは、多細胞生物の身体プランに見られる左右対称性(bilateral symmetry)がよく知られている。1
ヒトを含む多くの脊椎動物や節足動物などの左右相称動物は、発生初期の段階から厳密な遺伝子発現の制御を受けて体軸が形成され、外部形態としての左右対称性を獲得する。1
しかしながら、この形態学的な対称性はあくまで外見的なものや大ま的な基準に過ぎず、内臓の配置を見れば心臓の偏位や肝臓の偏在など、内部構造においては高度な非対称性(asymmetry)が維持されている。1
このような左右非対称な内臓逆位などの先天性疾患や形態異常の研究を通じて、正常胚における対称性の破れと部位特異的な器官形成の分子メカニズムが詳細に解析されている。1
さらに、神経科学や生理学の領域においても、脳の機能的半球優美性や半球特異性といった文脈で対称性の概念が議論されることがある。1
このように、対称性とその意図的な破れは、生命現象の秩序維持、進化生物学的な適応、さらには疾患の病態理解に至るまで、生命科学全般を貫く基礎的な原理として位置づけられている。2
参考文献・出典
- 厚生労働省e-ヘルスネット: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-035.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
- 国立国会図書館インターネット資料収集事業: https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11611726/www.nihs.go.jp/ICSH/ICH/Q/q6a_g.html ↩1 ↩2 ↩3
- 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/files/000157829.pdf ↩