HEALTH WORDS / 用語解説
局所浸潤麻酔
Local Infiltration Anesthesia
局所浸潤麻酔とは、手術や処置を行う部位の皮下組織や粘膜などの組織内に局所麻酔薬を直接注射し、その部位の末梢神経終末を遮断することで鎮痛を得る局所麻酔法の一種である。1 2
本法は比較的狭い範囲の外科手術や歯科治療、皮膚科領域の小手術、縫合術などに広く用いられている。3 4
局所麻酔薬が神経の細胞膜にある電位依存性ナトリウムチャネルに可逆的に結合することで、ナトリウムイオンの細胞内流入を抑制し、活動電位の発生および伝導をブロックする。5 6
これにより痛覚などの感覚刺激が中枢神経系へ伝達されることが阻止され、鎮痛効果が発揮される仕組みとなっている。7 3
局所浸潤麻酔で使用される代表的な薬剤には、リドカインやメピバカイン、プロカインなどが挙げられる。2 3
これらの薬剤は作用発現時間が比較的早く、適切な濃度と投与量を守ることで安全に施行することが可能である。8 3
また、血管収縮薬であるアドレナリンが配合されることが多く、これにより投与部位における局所麻酔薬の吸収速度が遅延し、麻酔作用の持続時間が延長するとともに、出血量を減少させる効果も期待できる。9 3
しかし、アドレナリンの血管収縮作用により、血流の乏しい末梢組織(例えば指趾、鼻尖、耳介など)に用いた場合に血流障害や組織壊死を引き起こすリスクがあるため、これらの部位への使用には十分な注意が必要とされている。10 3
臨床現場において局所浸潤麻酔を施行する際には、血管内への誤った注射による中毒症状を防ぐため、穿刺後に必ず逆血がないことを確認する吸引試験を行うことが重要である。2 3
万が一、局所麻酔薬が大量に血管内へ流入した場合には、中枢神経系障害や心血管系障害などの局所麻酔薬中毒を引き起こすおそれがあり、中枢神経系ではめまい、耳鳴り、意識障害、痙攣などが生じ、心血管系では血圧低下や心機能抑制、不整脈が現れることがある。11 3
さらに、アレルギー体質の患者やエステル型・アミド型の局所麻酔薬に対する過敏症の既往がある場合には、アナフィラキシーショックなどの重篤な過敏反応が出現する可能性もあるため、投与前の十分な問診と確認が不可欠である。12 3
総じて、局所浸潤麻酔は簡便かつ侵襲の少ない麻酔手技である一方で、解剖学的構造や薬剤の体内動態、副作用に関する深い知識を前提として適切に実施されなければならない。13 2
参考文献・出典
- 医療情報データベース: https://www.jpmdb.go.jp/ ↩
- 日本麻酔科学会: https://anesth.or.jp/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
- 日本口腔外科学会: https://www.jsoms.or.jp/ ↩
- 日本薬学会: https://www.pharm.or.jp/ ↩
- 国立国会図書館サーチ: https://iss.ndl.go.jp/ ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/ ↩
- 日本臨床麻酔学会: https://www.jsca-web.org/ ↩
- 日本歯科麻酔学会: https://www.jdsa.or.jp/ ↩
- 日本形成外科学会: https://jsprs.or.jp/ ↩
- 日本中毒学会: https://www.jsht.org/ ↩
- 日本アレルギー学会: https://www.jsaweb.jp/ ↩
- 日本医学会: https://jams.med.or.jp/ ↩