HEALTH WORDS / 用語解説
接着斑
Desmosome
接着斑とは、上皮細胞などの強固な機械的結合が要求される組織において、隣接する細胞同士を強力に接着させる細胞間結合の一種である。1
接着斑はデスモソームとも呼ばれ、主として皮膚の表皮や心筋組織など、機械的なストレスや張力が加わりやすい場所に多く存在している。2
この構造の超微形態学的特徴としては、隣接する細胞の細胞膜同士がわずかに離れ、その間に電子密度の高い細胞間隙が観察される点があげられる。3
細胞膜の細胞質側には、緻密なタンパク質の蓄積によって形成された厚い円板状の構造物である細胞質板が存在している。1
この細胞質板には、細胞骨格の主要な構成成分である中間径フィラメントの一種であるトノフィラメント(ケラチン線維など)が結合しており、細胞内部へとループを描くように広がることで張力に対する耐性を高めている。2
接着斑を構成する分子基盤としては、細胞間接着を担うカドヘリンスーパーファミリーに属する膜タンパク質であるデスモグレインやデスモコリンが中心的な役割を果たしている。4
これら細胞膜貫通型の接着分子は、カルシウムイオン依存的に隣接する細胞の細胞間隙で互いに結合し、強固な接着を維持している。1
一方、細胞質側では、デスモプラキン、 plakoglobin (プラコグロビン)、 plakophilin (プラコフィリン)などの細胞質プラークタンパク質がネットワークを形成している。4
これらのタンパク質群がカドヘリンの細胞質ドメインと中間径フィラメントを仲介することで、細胞膜の外側の接着力と細胞内部の細胞骨格が頑丈に連結される仕組みになっている。2
このような精緻な分子機構により、接着斑は組織全体に加わる物理的な負荷や牽引力を分散させ、細胞同士が物理的に引き離されるのを防ぐバリア機能および構造支持機能を発揮している。1
医学的な臨床の場や病理学においては、接着斑の構成成分に対する自己抗体の産生や遺伝的変異が、重篤な疾患の原因となることが知られている。5
例えば、尋常性天疱瘡や落葉状天疱瘡などの自己免疫疾患では、デスモグレインなどの接着分子に対する自己抗体が作られることで接着斑の機能が破綻し、皮膚や粘膜に水疱や糜爛が形成される。6
また、不整源性右室心筋症などの心疾患においては、接着斑を構成するデスモプラキンなどの遺伝子変異が心筋細胞間の結合を弱め、不整脈や心筋の変性を引き起こすことが明らかにされている。7
参考文献・出典
- 生化学辞典 第4止版: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E9%96%93%E7%B5%90%E5%90%88 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- 生物学用語辞典: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E9%96%93%E7%B5%90%E5%90%88 ↩1 ↩2 ↩3
- 解剖学用語集: https://www.jstage.jst.go.jp/article/transjsra/29/0/29_69/_pdf ↩
- 分子生物学データベース: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E9%96%93%E7%B5%90%E5%90%88 ↩1 ↩2
- 病理学データベース: https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E9%96%93%E7%B5%90%E5%90%88 ↩
- 皮膚科学会誌: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsa/72/5/72_413/_pdf ↩
- 循環器病研究報: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcvs/45/2/45_110/_pdf ↩