HEALTH WORDS / 用語解説
細胞間結合
Intercellular junction
細胞間結合とは、多細胞生物の体を構成する細胞と細胞の間や、細胞と細胞外基質の間を物理的に連結し、組織の構造的完全性を維持する特殊な膜タンパク質複合体の総称である。1 生物学および医学において、上皮組織をはじめとする様々な組織の恒常性維持、機械的ストレスに対する耐性の付与、および細胞間の情報伝達において中心的な役割を担う構造として知られている。1
動物の細胞間結合は、その形態学的特徴や生理学的機能に基づいて、主に密着結合、接着結合、デスモソーム、ヘミデスモソーム、およびギャップ結合の5つの主要なタイプに分類される。2 これらの結合様式は、それぞれ異なるタンパク質分子を基盤として構築されており、組織の種類や部位によって特異的な分布と組み合わせを示している。2
密着結合(タイトジャンクション)は、脊椎動物の上皮組織の最も頂端側に位置する細胞間結合である。3 クローディンやオクルディンなどの膜タンパク質が隣接する細胞の細胞膜同士を直接的に密着させ、細胞間の隙間をシールするような構造を形成している。2 この構造により、水分や水溶性のイオン、分子が上皮細胞層のすき間を通って受動的に移動するのを防ぐ「バリア機能」が発揮される。2 また、細胞膜の脂質や膜タンパク質が頂端側と側底側の間で自由に移動することを制限する「フェンス機能」も有しており、上皮細胞の極性を維持するために不可欠である。2
接着結合(アドヘレンスジャンクション)は、密着結合の直下に位置し、細胞同士を機械的に結合させる細胞間結合である。3 細胞接着分子であるカドヘリン(主として上皮ではE-カドヘリン)が細胞の外側でカルシウムイオン依存的に結合し、細胞内部ではカテニンなどのタンパク質を介してアクチン線維からなる細胞骨格ネットワークと強固に連結している。2 この機構により、組織に加わる機械的な張力を細胞間で分散させ、組織全体の形態を保持することが可能となっている。2
デスモソーム(接着斑)は、心筋や皮膚の表皮など、強い機械的ストレスや伸展・収縮が常にかかる組織に豊富に存在する細胞間結合である。3 デスモグレインやデスモコリンといったデスモソーム特異的なカドヘリンファミリー分子が細胞間を結び、細胞内部ではデスモプラキンなどのプラックタンパク質を介して中間径フィラメント(ケラチンやビメンチンなど)と結合している。2 この強固なアンカー構造により、細胞が物理的な力によって引き剥がされるのを防ぐ極めて高い機械的強度を組織にもたらしている。2
ヘミデスモソームは、細胞同士を結ぶのではなく、上皮細胞などの基底膜側と細胞外基質(基底膜のコラーゲンなど)とを接着させる構造であり、機能的には細胞間結合に類似した細胞基質結合である。3 インテグリンなどの膜タンパク質が細胞外基質と細胞内の中間径フィラメントを架橋することで、上皮組織が支持組織にしっかりと固定される。2
ギャップ結合(ネクサス)は、機械的な結合を主目的とする他の細胞間結合とは異なり、隣接する細胞の細胞質同士を直接的に連絡するチャネル構造である。3 コネキシンと呼ばれる膜タンパク質が6分子集まってコネクソン(ヘミチャネル)を形成し、それが隣接細胞のコネクソンと向かい合って結合することで、細胞間に微小な水溶性の通路を作り出す。2 これにより、分子量がおおむね1,000以下のイオン、糖類、アミノ酸、二次メッセンジャーなどの小分子が細胞間を直接移動することが可能となる。2 心筋組織における活動電位の伝播による同調した収縮や、平滑筋、神経系、あるいは発生過程における細胞間の代謝的・電気的な協調においてきわめて重要な生理学的役割を果たしている。3
参考文献・出典
- Anatomy, Cell Junction - StatPearls - NCBI Bookshelf: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK544256/ ↩1 ↩2
- Molecular Biology of the Cell - NCBI Bookshelf: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK26857/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12
- Anatomy, Cell Junction - NCBI Bookshelf: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK544256/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6