HEALTH WORDS / 用語解説
旧世界アレナウイルス
Old World arenaviruses
旧世界アレナウイルスとは、主としてアフリカ大陸、ヨーロッパ、アジアなどの旧世界に生息するげっ歯類を自然宿主とし、アレナウイルス科に分類されるウイルスのグループである。1
アレナウイルス科は、ゲノムとして一本鎖RNAを持つエンベロープを有するウイルスであり、その形態的特徴として電子顕微鏡下で宿主のリボソームを取り込んでいるように見える砂状の構造が観察されることから、ラテン語の「砂」を意味する「arena」にちなんで命名された。1
アレナウイルス科は、地理的分布および遺伝子的な系統に基づいて、「旧世界アレナウイルス(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスおよびアフリカ大陸のLassaウイルスなど)」と「新世界アレナウイルス(アメリカ大陸に分布するJuninウイルスやMachupoウイルスなど)」の2つの主要なグループに大きく分類されている。2
旧世界グループを代表する病原体の一つとして、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(Lymphocytic choriomeningitis virus: LCMV)が挙げられ、このウイルスは世界中に分布するハツカネズミを主要な宿主として維持されており、ヒトへの感染経路としては主にウイルスを保有するげっ歯類の尿、唾液、糞便などの排泄物との接触や、それらが乾燥して空気中に舞い上がったエアロゾルの吸引によって引き起こされる。3
また、旧世界アレナウイルスの中で最も公衆衛生上の脅威が大きい代表例として、西アフリカ地域を中心に流行を繰り返すラッサウイルスがあり、このウイルスによって引き起こされるラッサ熱は急性ウイルス性出血熱の一つであり、重症例では多臓器不全やショックを引き起こし、深刻な死亡率を示すことがある。4
旧世界アレナウイルスによる感染症の臨床像は、発熱、頭痛、筋肉痛といったインフルエンザ様疾患に類似した非特異的な症状から始まり、消化器症状や呼吸器症状を経て、重症化すると出血傾向や神経系の障害を伴うことがあるため、正確な診断には血清学的検査や遺伝子検査(PCR法など)が必要とされる。1
予防および感染拡大防止の観点からは、げっ歯類の家屋内への侵入を防ぐための環境整備、食品や水源の適切な管理、患者の隔離および医療従事者による標準予防策と接触予防策の徹底が極めて重要であり、治療においては抗ウイルス薬であるリバビリンが一定条件下で有効性と安全性の観点から使用されることがある。4
参考文献・出典
- 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/426-lassafever-intro.html ↩1 ↩2 ↩3
- CDC: https://www.cdc.gov/vhf/arena/index.html ↩
- 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/339-lcmv-intro.html ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/lassafever/index.html ↩1 ↩2