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HEALTH WORDS / 用語解説

機械感受性チャネル

Mechanosensitive channel

機械感受性チャネルとは、細胞外あるいは細胞内の機械刺激を感知し、それをイオンの透過といった電気化学的シグナルへ直接変換する膜タンパク質の一種である。1

機械感受性チャネルは原核生物から真核生物に至るまで広く保存されており、生物が物理的な力を感知するための分子基盤として極めて重要な役割を担っている。1

原核生物である大腸菌などの細菌においては、急激な浸透圧の低下に伴って細胞内が低張環境となり、細胞質へ流入する水によって過剰な膨張圧(turgor pressure)が生じる。1

このような極端な機械的ストレスから細胞が破裂して死滅するのを防ぐため、機械感受性チャネルは膜張力の増加を直接感知して急速に開口し、細胞内の溶質や水分を菌体外へ放出して細胞を保護する安全弁として機能する。2

大腸菌からは代表的なものとして、開口時のコンダクタンスの大きさや構造の違いにより、MscL(mechanosensitive channel of large conductance)、MscS(small conductance)、MscM(miniature conductance)といった複数のチャネルが同定されている。1

特にMscLはX線結晶構造解析や分子動力学シミュレーションなどを用いて盛んに研究がなされており、脂質二重膜の張力変化がどのようにタンパク質の立体構造変化を引き起こすのかというメカノトランスダクションの分子機構を解明するためのモデル系として広く利用されている。1

一方、哺乳類をはじめとする高等真核生物においても、機械感受性チャネルは触覚、聴覚、痛覚といった体性感覚や、血圧調節、血管収縮、骨代謝、さらには細胞増殖や筋萎縮の制御など、多様な生理現象において不可欠な役割を果たしている。2

哺乳類の機械感受性チャネルとしては、Piezoタンパク質(Piezo1およびPiezo2)がその代表例として知られており、機械的刺激に応答して陽イオンを透過させる巨大な膜タンパク質であることが明らかにされている。2

Piezoチャネルの発見以降、触覚の受容や血管内皮細胞における血流のせん断応力の感知、膀胱の伸展感知など、生体内における様々な力学刺激の受容メカニズムの解明が飛躍的に進展している。2

参考文献・出典

  1. 生物物理: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/51/6/51_290/_pdf/-char/ja ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. 生化学: https://kateto.net/pdf/Review2019.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4