ホーム種分化

HEALTH WORDS / 用語解説

種分化

Speciation

種分化とは、生物の1つの集団が遺伝的に二つ以上の集団に分岐し、それぞれが互いに交配できなくなる生殖隔離を達成して新しい種が形成される進化の過程である。1

生物の進化において種分化は中心的なプロセスであり、地球上の豊かな生物多様性を生み出す原動力となっている。ダーウィンの自然選択説をはじめとする進化生物学の枠組みにおいて、どのようにして新しい種が誕生するのかを解明することは極めて重要な課題である。種分化の本質は、既存の種の内部における遺伝的変異を持つ個体群の間で、遺伝子流動が制限されるあるいは完全に断たれることにある。

種分化の様式は、集団が地理的にどのように分布しているかに基づいていくつかの主要なタイプに分類される。その代表例が異所的種分化であり、山脈の隆起や河流の形成、大陸の分裂といった地理的隔離要因によって、一つの集団が物理的に分断されることで引き起こされる。分断されたそれぞれの集団は、独自の環境下で異なる自然選択を受けたり、遺伝的浮動や突然変異の蓄積を独自に経験したりする。その結果、長い年月をかけて両者の遺伝子プールに大きな差異が生じ、再び両者が接触したとしても交配して生殖能力のある子孫を残せなくなる生殖隔離メカニズムが完成する。

これに対して、地理的な障壁を伴わずに種分化が進行する場合もあり、これを同所的種分化と呼ぶ。同所的種分化は、同じ地理的領域に生息しながらも、利用する資源や寄主植物の違い、あるいは異なる求愛行動や繁殖時期のずれなどによって遺伝的交流が制限されることで生じる。特に植物の世界では、倍数体形成による染色体数の変化が瞬発的な生殖隔離をもたらし、同所的種分化の主要なメカニズムとなることが知られている。また、地理的隔離と同所的種分化の中間的な形態として、隣接する集団の間で生じる周縁的種分化や側所的種分化なども提唱されている。

生殖隔離を成立させる隔離機構には、交配が起こる前段階である受精前隔離と、交配や受精が起こった後あるいは子孫の段階で働く受精後隔離が存在する。受精前隔離には、求愛行動の不一致による行動的隔離、繁殖期のずれによる時間的隔離、生息場所の選好性による生態的隔離などが含まれる。一方、受精後隔離には、雑種致死や雑種不妊といった、異種間交配によって生じた個体の生存率や繁殖力の低下が挙げられ、これらは遺伝子座間の不適合や染色体構造の差異に起因している。

近年の分子遺伝学やゲノム科学の飛躍的な進歩により、種分化を引き起こす遺伝的基盤の解明が進められている。特定の形質の変化や生殖隔離に関与する遺伝子の特定や、ゲノムワイドな解析を用いた種分化遺伝子の探索が行われており、適応進化と種分化の密接な関係が明らかにされつつある。これにより、形態的な差異が乏しい隠蔽種の発見や、急速な適応放射に伴う複雑な種分化の歴史の再構築が可能になっている。2

参考文献・出典

  1. 生物多様性センター 生物多様性条約: https://www.biodic.go.jp/cbd/j_text/glossary/glossary.html ↩
  2. 国立遺伝学研究所 遺伝学電子博物館: https://www.nig.ac.jp/museum/evolution/07_speciation.html ↩