HEALTH WORDS / 用語解説
隔離
Isolation
隔離とは、感染症に罹患している、またはその疑いがある患者を、他の健康な人々との接触を断つことにより、病原体の伝播を防止する公衆衛生学的および臨床医学的な措置である1。
感染症法においては、感染症の患者等を特定施設に収容し、社会一般との接触を絶つことで感染拡大を防ぐ法制度上の対応を指す場合がある2。
臨床現場における隔離の主たる目的は、医療関連感染(院内感染)の防止であり、病院内での多剤耐性菌や飛沫感染・空気感染をきたす病原体の伝播を遮断することにある3。
感染経路に応じた予防策として、標準予防策(スタンダードプリコーション)に加え、接触予防策、飛沫予防策、空気予防策が講じられ、それぞれに必要な個室管理や陰圧室の使用などの物理的隔離が行われる4。
物理的隔離の代表的な手法として、患者を単独の病室に収容する個室隔離があり、これにより接触感染や飛沫感染の機会を大幅に減少させることが可能となる5。
また、空気感染を引き起こす結核や水痘などの疾患に対しては、病室内の空気が外部に漏出しないよう制御された陰圧隔離病室が用いられ、医療従事者や他の患者への二次感染を防ぐ環境制御がなされる6。
これに対し、感染症への曝露が疑われるものの症状がまだ出現していない接触者等を一定の期間にわたり空間的・社会的事情的に制限下に置く措置は、医学的には検疫や健康観察、あるいは一般的な文脈では隔離と区別して自主隔離などと称されることもあるが、公衆衛生の危機管理においては同等の隔離政策の一部として運用されることがある7。
医療経済学的または施設管理的側面においても、隔離を適切に実施することは、アウトブレイク発生時の経済損失や医療崩壊を防ぐために極めて重要なプロトコルである8。
しかし、長期間の隔離は患者に対して精神的ストレス、不安、抑うつ、せん妄などの心理的影響を及ぼすことが知られており、臨床心理士や精神科医らによる心理的支援やメンタルヘルスケアの並行が不可欠である9。
生物学や遺伝学の分野における「隔離」とは、同一種の集団が地理的、生態的、生殖的な障壁によって分断され、遺伝子交流が断たれる現象(生殖隔離や地理的隔離)を指すこともあり、これにより種分化が促進される進化生物学上の基本概念としても重要視されている10。
参考文献・出典
- 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennjoujoho/32-idwr/7346-idwr-suuryo-73.html ↩
- e-Gov法令検索: https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000114 ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000885235.pdf ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/content/000885237.pdf ↩
- 国立国際医療研究センター 国際感染症センター: https://www.ncgm.go.jp/ryokou/kanren/pdf/guideline2017.pdf ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html ↩
- 世界保健機関(WHO): https://www.who.int/publications/i/item/WHO-WHE-CPI-2020.4 ↩
- 経済産業省: https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/hakusho_r2_part2_chapter2.pdf ↩
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431.html ↩
- 国立遺伝学研究所: https://www.nig.ac.jp/nig/ja/ ↩