HEALTH WORDS / 用語解説
粘膜線毛クリアランス
粘膜線毛クリアランスとは、気道の上皮表面において、粘液と線毛の協調的な働きによって吸入された異物や病原体を体外へ排除する生体の防御機構である。1
人間をはじめとする哺乳類の呼吸器系では、鼻腔から気管、気管支に至る広い範囲の気道粘膜に線毛上皮細胞と杯細胞などが存在している。2 杯細胞や粘液腺から分泌された粘液は気道の表面を覆う粘液層を形成し、空気とともに吸入された塵埃、細菌、ウイルスなどの異物を捕捉する性質を持っている。2
気道の上皮表面に密生する線毛は、1秒間に数十回という非常におのおのの細胞が同調した規則正しい運動を行っている。2 この線毛の運動は有効打撃と回復打撃を繰り返すことで、粘液層とその内部に捕捉された異物を咽頭方向へ向けて一定の速度で絶えず輸送する役割を担っている。2 咽頭まで運ばれた粘液は、無意識のうちに嚥下されるか、あるいは痰として体外に排出されるため、下気道の無菌性が保たれる仕組みとなっている。1
この粘膜線毛クリアランス機能は、呼吸器を感染症や環境汚染物質から守るための非常に重要な生体防御システムである。2 しかし、喫煙などに含まれる有害化学物質やニコチンなどは、線毛の運動を抑制したり細胞を障害したりすることが知られている。1 長期間にわたる喫煙や大気汚染物質の吸入によって粘膜線毛クリアランスが低下すると、気道内に異物や分泌物が滞留しやすくなる。1 その結果、慢性気管支炎などの呼吸器疾患を発症するリスクが高まり、感染症に対する抵抗力も著しく減弱することになる。2