HEALTH WORDS / 用語解説
細胞の寿命
Cellular lifespan
細胞の寿命とは、細胞がその分裂能を維持し、あるいは代謝活動を継続して生存し続ける期間のことを指す。1 多細胞生物を構成する細胞の寿命は、その種類や組織における役割、および個体の生理的状態によって極めて多様性に富んでいる。2
一般に、哺乳類の細胞における寿命の決定には、分裂回数の限界に関するヘイフリック限界(Hayflick limit)が深く関与している。2 体細胞はDNA複製のたびに染色体の末端にあるテロメア(telomere)が短縮していき、これが一定の限界長に達すると細胞分裂を恒久的に停止する細胞老化(cellular senescence)へと誘導される。2 このテロメアの短縮に伴う老化メカニズムは、がん化を抑制する生体防衛機構としての側面を持つ一方で、個体老化の原因や組織の再生能力低下を引き起こす要因とも考えられている。3
一方で、全ての細胞が有限の分裂回数を持つわけではない。 生殖細胞や幹細胞、および一部の腫瘍細胞では、テロメアを伸長させる酵素であるテロメラーゼ(telomerase)が活性化しており、テロメアの長さを維持することで無限の増殖能を維持することが可能となっている。2 これに対して、神経細胞や心筋細胞などの高度に分化した終末分化細胞は、成体においてほとんど分裂を行わず、個体の寿命と同等あるいはそれに近い長期間にわたって生存し続ける。2 ただし、このような非分裂細胞においても、活性酸素種(ROS)による酸化ストレスやDNA損傷、タンパク質の凝集などが蓄積することで、時間経過に伴う機能低下や細胞死が生じる。1
また、細胞の寿命を制御する分子機構としては、テロメア以外にもアポトーシスなどのプログラム細胞死経路や、オートファジー(自食作用)による細胞内成分の品質管理システムが重要な役割を担っている。2 栄養飢餓やストレスに応答するmTORシグナル伝達経路やサーチュイン(Sirtuin)などの長寿遺伝子関連因子も、細胞の代謝状態を調節し、寿命や老化のプロセスに多大な影響を与えていることが明らかにされている。3
参考文献・出典
- 生命科学データベースアーカイブ: https://lifesciencedb.jp/ ↩1 ↩2
- J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/44/5/44_5_248/_pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
- ライフサイエンス 新着論文レビュー: https://shinka.lifesciencedb.jp/archives/14986 ↩1 ↩2