HEALTH WORDS / 用語解説
気道上皮
Airway epithelium
気道上皮とは、鼻腔から終末気管支あるいは肺胞に至るまでの気道の内腔を覆う上皮組織であり、外環境と直接接触しながら生体防御の最前線として機能する単層または多列の細胞層である。1
気道上皮は、線毛細胞、杯細胞、基底細胞、クラブ細胞(旧称クララ細胞)など、多様な細胞種によって構成されている。2 これらの細胞が協調して働くことにより、吸入される異物、病原体、化学物質などの侵入を防ぎ、呼吸器系の恒常性を維持している。3
上皮細胞の表面には線毛が存在し、これが規則正しく一方向に運動することで、分泌された粘液と捕捉した異物を咽頭方向へ絶えず輸送している。4 この仕組みは粘液線毛クリアランスと呼ばれ、気道を清浄に保つ上で極めて重要な生体防御機構の一つである。5
また、杯細胞や粘液腺からは粘液(ムチンなど)が分泌され、気道内腔の保湿を行うとともに、吸入粒子を物理的に捕捉する。4 さらに、隣接する上皮細胞同士はタイトジャンクション(密着結合)などの細胞間結合によって強固に結ばれており、異物や病原体の体内への侵入を阻止する物理的なバリア機能を形成している。6
気道上皮細胞は単なる物理的バリアにとどまらず、自然免疫応答の主役としても機能する。3 ウイルスや細菌などの病原体が侵入した際には、パターン認識受容体を介してこれらを検知し、サイトカインやケモカインを産生・分泌して免疫細胞を活性化させる。7
気道過敏症や喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患においては、環境因子や炎症によって気道上皮のバリア機能が破綻することが知られている。2 上皮の障害と修復過程の異常は、気道リモデリングを引き起こし、疾患の病態形成や重症化に深く関与している。7
参考文献・出典
- 慶應義塾大学医学部 呼吸器内科: https://www.keio-pulm.jp/research/research-detail.html?id=23 ↩
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト: https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo31_1.html ↩1 ↩2
- 国立環境研究所: https://www.nies.go.jp/kanko/i_mag/i_mag2009.html ↩1 ↩2
- J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/54/12/54_1196/_pdf/-char/ja ↩1 ↩2
- J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/3/101_633/_pdf/-char/ja ↩
- 国立国際医療研究センター病院: https://www.hosp.ncgm.go.jp/ryumachi-kojin/030.html ↩
- J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/67/4/67_405/_pdf/-char/ja ↩1 ↩2