HEALTH WORDS / 用語解説
脱ヨード酵素
脱ヨード酵素とは、甲状腺ホルモンの分子構造からヨウ素(ヨード)原子を脱離させることで、活性型ホルモンへの変換や不活性化を触媒する酵素の総称である。1
生物の体内において、甲状腺から分泌されるホルモンの大部分は生理活性が低いチロキシン(T4)であり、標的組織において脱ヨード酵素の作用によりヨウ素が1個取り除かれることで、生理活性が高いトリヨードチロニン(T3)へと変換される。1
脱ヨード酵素にはいくつかのアイソザイムが存在し、それぞれ異なる組織分布や機能上の役割を持っている。第1型脱ヨード酵素(D1)は、主に肝臓や腎臓、甲状腺に存在し、血中のT3産生やヨウ素の再利用に関与している。2
第2型脱ヨード酵素(D2)は、脳や下垂体、褐色脂肪組織、骨格筋などに局在しており、細胞内でT4を局所的に活性型のT3へと変換することで、中枢神経系における甲状腺ホルモンの恒常性維持に重要な役割を果たしている。2
これに対して第3型脱ヨード酵素(D3)は、T4やT3の内環側からヨウ素を脱離させることで、それぞれ不活性なリバースT3(rT3)や3,3'-二ヨードチロニンへと変換し、過剰な甲状腺ホルモンの作用から組織を保護する働きを持つ。2
D3は胎児期の組織や胎盤、あるいは成人の中枢神経系や皮膚などに発現しており、ホルモンのシグナル伝達を抑制する調節弁として機能している。2
これらの脱はいずれも、生体内の代謝速度やエネルギー消費、体温調節、そして成長発育を精密にコントロールする上で極めて重要な生化学的反応を担っている。1
脱ヨード酵素の活性は、セレンという必須微量元素の栄養状態や、さまざまな疾病状態、ストレスなどによって変動することが知られている。1
例えば、主要な脱ヨード酵素の触媒ドメインにはセレノシステインというアミノ酸が含まれており、セレンが欠乏すると酵素の機能が低下し、甲状腺ホルモンの代謝異常を引き起こす原因となる。2