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HEALTH WORDS / 用語解説

阻害物質

Inhibitor

阻害物質とは、生物学や生化学の分野において、特定の酵素の触媒作用、受容体へのリガンドの結合、あるいは特定の生化学的代謝経路や生理活性を減弱あるいは停止させる作用を持つ化学物質の総称である。1

生体内における多くの化学反応はタンパク質の一種である酵素によって制御されているが、阻害物質はこれら生体高分子に特異的に作用してその機能を低下させる。

阻害物質の作用機序は多岐にわたり、大きく可逆的阻害と不可逆的阻害に分類される。

可逆的阻害においては、阻害物質は酵素や受容体に対して非共有結合的に結合するため、その結合と解離は平衡状態にある。

これには、基質と構造が類似しているために酵素の活性中心をめぐって基質と競合する競合阻害(拮抗阻害)や、活性中心以外の部位に結合して酵素の立体構造を変化させ、基質の結合を妨げる非競合阻害などが含まれる。

一方、不可逆的阻害では、阻害物質が酵素などの標的分子と共有結合を形成するため、一度結合すると容易には解離せず、標的分子の機能は恒久的に失われることが多い。

生物学および薬理学において、阻害物質は生命現象の解明や医薬品の開発において極めて重要な役割を果たしている。

例えば、特定の代謝経路を選択的に止めることで、その経路が細胞機能や個体レベルの生理学においてどのような役割を果たしているかを解析するツールとして利用される。

また、疾患の原因となる特定の酵素や受容体の機能を抑える阻害物質は、そのまま低分子化合物医薬品としての応用が期待される。

実際、多くの臨床用医薬品、例えば抗生物質、抗がん剤、高血圧治療薬などは、体内の特定の酵素や受容体に対する阻害物質としてデザインされている。

さらに、阻害物質は自然界にも広く存在しており、植物が草食動物や病原菌からの防御のために産生する二次代謝産物や、毒キノコなどの天然物に含まれる毒素の多くも、生体内の特定の酵素や神経伝達を阻害する物質としての性質を持っている。

このように、阻害物質の研究は基礎科学から医療応用まで幅広い分野に深く関わっている。2

参考文献・出典

  1. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200906048123456789 ↩
  2. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/ ↩