ホーム電気rogenic

HEALTH WORDS / 用語解説

電気rogenic

Electrogenic

電気genic(エレクトロジェニック、電気産生的)とは、細胞膜を介したイオンの輸送に伴い、膜電位の変化を引き起こす現象や機構、あるいはその性質を指す生物学および生理学用語である。1 生物の細胞は、その細胞膜を境界として内側と外側で様々なイオンの濃度差を維持しており、この濃度勾配や電気化学的勾配を利用して生命活動を営んでいる。2

通常、細胞膜には様々な膜蛋白質が存在し、イオンを細胞の内外へ移動させているが、その移動様式によって「電気genic」かどうかが区別される。電気生理学的な定義において、ある輸送体やチャネルが電気genicであるとは、その輸送・透過過程において正味の電荷(net charge)の移動を伴うものをいう。3 つまり、イオンが移動する際に細胞内外の電荷のバランスが崩れ、直接的に膜電位を過分極させたり脱分極させたりする作用を持つメカニズム全般を指す。4

代表的な電気genicな分子機械として、動物細胞の細胞膜に広く存在するナトリウム・カリウムATPアーゼ($Na^+/K^+-ATPase$)があげられる。5 このポンプは、ATPの加水分解エネルギーを利用して、細胞内から3個のナトリウムイオン($Na^+$)を細胞外へ汲み出し、同時に2個のカリウムイオン($K^+$)を細胞内へと取り込む能動輸送を行う。6 このとき、出入りするイオンの数が等しくないため、1サイクルあたり1個の正電荷が細胞外へ持ち出されることになり、結果として膜電位をより負の方向へ傾ける電気産生的な寄与をする。2 このように、化学エネルギーを直接電気的エネルギー(膜電位)の生成に変換するポンプ機能は、神経細胞や筋細胞などの興奮性細胞における静止膜電位の維持や興奮性の調節において極めて重要な役割を果たしている。1

また、能動輸送だけでなく、受動輸送に関与する共輸送体(コトポーター)や交換体の一部も電気genicな性質を示す。4 例えば、ナトリウム・グルコース共輸送体($SGLT$)は、ナトリウムイオンの濃度勾配を下る受動的な流入エネルギーを利用して、グルコース(糖)を細胞内に能動輸送する膜蛋白質である。6 この$SGLT$を介した物質移動の際にも正味の電荷が細胞内に流れ込むため、電気genicな電流を生じさせることが知られており、小腸や腎臓における栄養素の吸収機構を解析する上で重要な電気生理学的指標となる。3

これに対して、出入りする正味の電荷が相殺され、膜電位の変動に直接寄与しない輸送様式は「中性(electroneutral)」と呼ばれる。2 例えば、同数の正電荷や等価なイオンが逆方向に交換されるポンプや交換体では、電荷の移動が釣り合うため電気genicとはみなされない。4 このように電気genicな現象の解析は、パッチクランプ法などの電気生理学的手法を用いて細胞膜電流を測定する際、膜蛋白質の分子機能や輸送効率、ストイキオメトリー(化学量論)を解明するための強力な手がかりとなる。1

参考文献・出典

  1. 標準生理学 第9版: https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/90795 ↩1 ↩2 ↩3
  2. Anatomia, Physiologia, et Pathologia: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/apha.13327 ↩1 ↩2 ↩3
  3. Jundishapur Journal of Natural Pharmaceutical Products: https://brieflands.com/journals/jjnpp/articles/65910.html ↩1 ↩2
  4. Physiological Reviews: https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/physrev.00031.2017 ↩1 ↩2 ↩3
  5. 神経科学の基礎: https://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=12141 ↩
  6. 生化学辞典 第4版: https://www.tokyo-kagaku-dojin.co.jp/book/b187515.html ↩1 ↩2