ホーム5-ヒドロペルオキシ酸

HEALTH WORDS / 用語解説

5-ヒドロペルオキシ酸

5-ヒドロペルオキシ酸とは、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸がリポキシゲナーゼなどの酵素あるいは自動酸化によって酸化されることで生成する過酸化物の一種である。1 生体内における脂質過酸化反応の初期段階において重要な中間体として位置づけられており、生体膜の構造や機能に深刻な影響を与える活性酸素種やフリーラジカルの生成過程と深く関わっている。2

化学的な構造としては、脂肪酸の炭素鎖における5位の位階にペルオキシ基(-O-OH)が導入されたカルボン酸誘導体であり、極めて高い反応性を示す点が大きな特徴である。 この化合物は単体で安定して存在することが難しく、速やかに二次的な分解反応を起こして様々なアルデヒド類やケトン類などの代謝物へと変換されていく。 特にアラキドン酸の代謝経路においては、5-ヒドロペルオキシ酸である5-HPETE(5-ヒドロペルオキシイコサテトラエン酸)が代表的な中間体として知られており、強力な生理活性を持つロイコトリエンなどのイコサノイドへと生合成される際の必須の前駆体として機能している。1

生物学的および医学的な観点から見ると、5-ヒドロペルオキシ酸をはじめとするヒドロペルオキシ酸の過剰な蓄積は、細胞障害や酸化ストレスを引き起こす主要因の一つと考えられている。 生体内には抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼなどが存在しており、これらが5-ヒドロペルオキシ酸を速やかに還元して対応するヒドロキシ酸へと変換することで、細胞を酸化障害から保護する防御機構が働いている。2 しかしながら、加齢や各種の疾患状態においてこの抗酸化防御システムが破綻すると、5-ヒドロペルオキシ酸の生成と分解のバランスが崩れ、炎症反応の増悪や動脈硬化、さらには神経変性疾患などの病態形成に関与することが示唆されている。 このように、5-ヒドロペルオキシ酸は単なる脂質の分解産物にとどまらず、シグナル伝達分子としての役割と細胞毒性の両面をあわせ持つ重要な生体物質として、幅広く研究が進められている。1

参考文献・出典

  1. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907038161565597 ↩1 ↩2 ↩3
  2. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201002035345719946 ↩1 ↩2