HEALTH WORDS / 用語解説
PARP
PARPとは、Poly(ADP-ribose) polymerase(ポリADPリボースポリメラーゼ)の略称であり、真核生物の細胞内においてDNA損傷の検知やDNA修復に中心的な役割を果たす酵素ファミリーである12。
ヒトの細胞にはPARPファミリーに属する複数のタンパク質が存在することが知られており、その中でも特にPARP-1とPARP-2がDNA修復において主要な機能を担っている2。 細胞が紫外線や放射線、化学物質などの影響や代謝の過程でDNA鎖切断などのDNA損傷を受けた際、PARPは迅速にその損傷部位へと結合する12。
DNA損傷部位に結合したPARPは、補酵素であるNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を基質として利用し、標的タンパク質に対してポリADPリボース鎖を付加する反応である「ポリADPリボース化(PARylation)」を触媒する2。 この反応によって生じたポリADPリボースの負電荷がシグナルとなり、塩基除去修復(BER)などのDNA修復に関与する様々な因子が損傷部位へとリクルートされ、速やかにDNAの修復が遂行される仕組みになっている2。
近年、このPARPのDNA修復メカニズムを利用したがん治療薬として、PARP阻害薬の開発と臨床応用が進んでいる12。 BRCA1やBRCA2といった遺伝子に変異があるがん細胞では、もともと相同組換え修復という別の主要なDNA修復経路が機能不全に陥っている12。 このようながん細胞に対してPARP阻害薬を投与し、PARPによるDNA修復も同時に阻害すると、細胞はDNA損傷を修復できずに細胞死に至ることになる12。 この現象は「合成致死(Synthetic Lethality)」と呼ばれており、正常な細胞への毒性を相対的に抑えつつ、特定の遺伝子異常を持つがん細胞を特異的に死滅させる画期的な分子標的治療の概念として広く応用されている2。
このようにPARPは、生体のゲノム安定性を維持するための極めて重要な酵素であると同時に、がんの薬物療法において治療標的としても非常に重要な位置を占めている分子である12。