HEALTH WORDS / 用語解説
SMAD9
SMAD family member 9
SMAD9とは、トランスフォーミング増殖因子-beta(TGF-beta)スーパーファミリーや骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路において重要な役割を果たすタンパク質をコードする遺伝子、およびその遺伝子によって発現する分子のことである。1 ヒトにおいてSMAD9遺伝子は、染色体上の13q13.3に位置している。((National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/4093]]
SMADタンパク質ファミリーは、細胞膜上の受容体から細胞核へとシグナルを伝達するR-SMAD(受容体調節型SMAD)に分類され、SMAD9はその一つとして機能する。2 特にBMPシグナル伝達において、SMAD9はリン酸化されることで活性化し、共通パートナーであるSMAD4と複合体を形成する。1 この複合体は細胞核内へ移行し、標的遺伝子の転写を調節することで、細胞の増殖、分化、アポトーシスなどの多様な生物学的プロセスを制御している。2
臨床医学および遺伝学の分野において、SMAD9遺伝子の変異は肺動脈性肺高血圧症(PAH)などの心血管疾患との関連性が指摘されている。1 肺動脈性肺高血圧症は、肺動脈の内皮細胞や平滑筋細胞の異常な増殖を特徴とする難治性の疾患であり、BMP-SMADシグナル経路の破綻がその病態生理に深く関与していることが示されている。2 また、BMPシグナルは骨組織の形成や血管の恒常性維持にも不可欠であるため、SMAD9の機能異常は骨形成や血管新生の異常を引き起こす可能性がある。1
このようにSMAD9は、細胞間の情報伝達ネットワークにおいて遺伝子発現を制御し、個体の発生や組織の維持、さらには特定の遺伝性疾患の発症機序を理解する上で重要な研究対象となっている。2
参考文献・出典
- Genetics Home Reference: https://medlineplus.gov/genetics/gene/smad9/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/4093 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4