HEALTH WORDS / 用語解説
STAT5A
STAT5A
STAT5Aとは、哺乳類において遺伝子の転写を調節するタンパク質であり、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)ファミリーの一員である遺伝子およびその産物である分子のことである。1
STAT5A遺伝子はヒトでは染色体11番目の長腕(11q13.3)に位置しており、近縁の遺伝子であるSTAT5Bと並んでゲノム上に存在している。2
このタンパク質は、サイトカインやホルモンなどの細胞外からのシグナルを受け取った細胞において重要な役割を果たしており、造血、免疫応答、乳腺の発育や乳汁タンパク質の合成といった多様な生物学的プロセスに関与している。3
細胞外のリガンドが受容体に結合すると、受容体に結合しているJAKキナーゼ(Janusキナーゼ)が活性化され、受容体の細胞質ドメインがリン酸化される。
このリン酸化された部位にSTAT5Aがリクルートされ、JAKキナーゼによってチロシン残基がリン酸化を受けることで活性化する。3
活性化したSTAT5Aは二量体を形成し、核内へと移行して特定のDNA配列(GAS配列など)に結合することで、下流の標的遺伝子の転写を直接誘導する仕組みを持つ。1
プロラクチンや成長ホルモン、エリスロポエチン、さらには様々なインターロイキンなどのシグナル伝達経路において、STAT5Aは主要なシグナル伝達因子として機能することが知られている。3
特に乳腺の発達や授乳期における機能維持においては不可欠であり、遺伝子ノックアウトマウスの研究では、STAT5Aが欠損した個体において乳腺の発育不全や泌乳の障害が生じることが示されている。2
また、免疫系においてはT細胞の分化や制御性T細胞の維持、NK細胞の活性化などにも深く関わっており、生体の免疫恒常性の維持に寄与している。3
一方で、STAT5Aの異常な活性化や変異は、白血病などの血液悪性腫瘍や固形がんを含む様々な疾患の発症や進展にも関与していることが報告されており、創薬のターゲットとしても注目を集めている。1
参考文献・出典
- Human Protein Atlas: https://www.proteinatlas.org/ENSG00000126561-STAT5A ↩1 ↩2 ↩3
- Entrez Gene: STAT5A signal transducer and activator of transcription 5A [Homo sapiens]: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/6776 ↩1 ↩2
- UniProt: STAT5A - Signal transducer and activator of transcription 5A - Homo sapiens (Human): https://www.uniprot.org/uniprotkb/P42229/entry ↩1 ↩2 ↩3 ↩4