HEALTH WORDS / 用語解説
TRPM4
Transient receptor potential melastatin 4
TRPM4とは、一時的受容体電位(Transient receptor potential: TRP)チャネルファミリーのメラスタチンサブファミリーに属する、カルシウム非透過性の一価陽イオンチャネルである。1 細胞外からのカルシウムイオンの流入ではなく、細胞内カルシウム濃度の上昇によって活性化され、主にナトリウムイオンなどの一価陽イオンを透過させる性質を持つ。2
TRPM4遺伝子はヒトの第19染色体の長腕(19q13.33)に位置しており、全身の様々な組織や器官で発現している。1 特に心臓の伝導系、脳などの中枢神経系、免疫系の細胞、平滑筋などにおいて重要な生理学的役割を果たしていることが知られている。2
心臓におけるTRPM4の働きは、心筋細胞の電気生理学的特性の維持に深く関与している。2 心臓の刺激伝導系において膜電位の脱分極を引き起こし、心拍数の調整や興奮伝播に寄与している。1 そのため、TRPM4遺伝子における変異は、心臓の電気信号伝達異常を引き起こし、不整脈などの疾患と直接的な関連性があることが明らかにされている。1
具体的には、TRPM4の機能異常や変異は、家族性心房細動やBrugada症候群、房室ブロック、さらには進行性家族性心臓伝導障害などの遺伝性心疾患を引き起こす原因となることが報告されている。1 これらの疾患では、チャネルの発現量が異常に増加することや、カルシウムに対する感受性の変化によって細胞膜の電位制御が乱れ、心臓の正常な拍動が維持できなくなる。2
また、心血管系以外においても、TRPM4は免疫細胞であるマクロファージやT細胞の活性化、走化性、サイトカインの産生などの免疫応答に関与している。2 中枢神経系においては、虚血性脳卒中や脊髄損傷の際に引き起こされる細胞死や神経性炎症のメカニズムに関与していることが示唆されており、脳浮腫の形成にも影響を与えると研究されている。2
このように、TRPM4は細胞内のカルシウムシグナル伝達と膜電位のバランスを調整する重要なイオンチャネルであり、その機能不全は心疾患をはじめとする多様な病態につながるため、新たな創薬標的としても高い注目を集めている。1