HEALTH WORDS / 用語解説
α-2,6結合
alpha-2,6-linkage
α-2,6結合とは、糖鎖のシアル酸がガラクトースなどの糖残基と結びつく際のグリコシド結合様式のひとつであり、シアル酸の2位の炭素とガラクトースなどの6位の炭素が酸素原子を介して結合したものを指す。1
糖鎖の末端に位置することが多いシアル酸は、ウイルスや細菌などの病原体が宿主細胞へ感染する際の受容体としての認識部位や、生体内における蛋白質の安定性や半減期を決定する重要な糖修飾因子として機能している。2
インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(HA)は、宿主細胞表面の糖鎖に存在するシアル酸と結合して感染を成立させるが、その際に糖鎖の結合様式を識別することが知られている。3
一般的にヒトに感染しやすいヒトインフルエンザウイルスのHAは、上気道上皮細胞に多く発現しているα-2,6結合を介したシアル酸糖鎖を好んで受容体として認識し結合する特徴を持っている。4
これに対して、鳥類に主として感染する鳥インフルエンザウイルスは、鳥類の腸管などに多く存在するα-2,3結合を介したシアル酸を受容体として優先的に結合することが知られている。5
ヒトの上気道における細胞表面にはα-2,6結合型糖鎖が豊富に存在しているため、ヒトインフルエンザウイルスが効率よく付着して増殖しやすい組織学的な解剖学的環境が形成されている。6
一方、低病原性鳥インフルエンザウイルスや高病原性鳥インフルエンザウイルスが持つHAはα-2,3結合に対する親和性が高いため、通常の状態ではヒトからヒトへ容易には感染・伝播しにくい要因となっている。7
しかしながら、ウイルスの遺伝子変異などによって赤血球凝集素のアミノ酸配列が変化し、α-2,3結合に対する結合性に加えてα-2,6結合に対しても親和性を獲得するような変異が生じた場合には、ヒト受容体への結合能が高まり新型インフルエンザとして大流行するリスクが懸念される。8
また、医薬品として用いられる抗体医薬品や糖蛋白製剤の製造工程においても、糖鎖の構造解析やシアル酸の結合様式の比率(α-2,6結合とα-2,3結合の比率など)を評価することは、血中半減期や有効性、さらには免疫原性を担保するうえで極めて重要な品質管理の項目となっている。9
参考文献・出典
- PMDA 医薬品評価背後資料: https://www.pmda.go.jp/files/000215437.pdf ↩
- 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター: https://www.nihs.go.jp/anzen/byoi/20211116-2.pdf ↩
- 厚生労働省 鳥インフルエンザに関するQ&A: https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/qa.html ↩
- 国立感染症研究所 インフルエンザとは: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansenshou/10-idwr/3300-idwr-tp-1015.html ↩
- 農林水産省 高病原性鳥インフルエンザに関する情報: https://www.maff.go.jp/j/syouan/doueiseisaku/tori_hp/" ↩
- 厚生労働省 感染症情報: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html ↩
- 国立感染症研究所 感染症情報センター: https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/influenza/210-idsc/901-qa.html ↩
- 内閣官房 鳥インフルエンザに関する情報: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/tori/index.html ↩
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 審査報告書: https://www.pmda.go.jp/drugs/2019/P201900030/340212000_23100AMX02456_I100_1.pdf ↩