HEALTH WORDS / 用語解説
アトロピン代用薬
Atropine substitute
アトロピン代用薬とは、アトロピンと同様に副交感神経のムスカリン受容体においてアセチルコリンと拮抗し、その作用を競合的に阻害することでコリン作動性の神経伝達を抑制する薬剤の総称である。1 自律神経系のうち副交感神経の働きを遮断することから、一般に抗コリン薬あるいは副交感神経遮断薬とも呼ばれる。2
アトロピンは古くからナス科の植物に含まれるアルカロイドとして知られ、散瞳、唾液分泌の抑制、心拍数の増加、平滑筋の弛緩など多様な薬理作用を示す。3 しかし、中枢神経系への移行性が高いことや、作用時間の調整、あるいは特定の器官に対する選択性が低いといった点から、臨床上の目的に応じてより優れた特性を持つ合成化合物や半合成物質が開発されてきた。1 このような背景から、アトロピンの持つ有用な抗コリン作用を維持しつつ、副作用の軽減や適応部位の特異性を高めた一群の薬剤がアトロピン代用薬として位置づけられている。3
薬理学的な分類においては、アトロピン代用薬は主にその化学構造や親水性・疎水性の性質、さらには臨床的な使用目的に応じていくつかのサブグループに分けられる。2 例えば、第3級アミン構造を持つ薬剤は脂溶性が高いため血液脳関門を通過しやすく、中枢神経系に対する作用や副作用が現れやすい特徴を持つ。1 これに対して、第4級アンモニウム塩構造を持つ代用薬は極性が高く水溶性であるため、血液脳関門を通過しにくく、中枢神経性の副作用を回避しやすいという利点がある。3
臨床の現場においては、消化器系の痙攣性疾患や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などにおける胃酸分泌の抑制や消化管の運動抑制を目的として広く利用されてきた。1 また、麻酔前投与薬として気道分泌物の減少を図る目的や、手術中の迷走神経反射による徐脈を予防・改善する目的でも使用される。3 さらに、眼科領域においては調節麻痺や散瞳を目的として、点眼薬の形で用いられることもある。2
一方で、アトロピン代用薬の投与に伴う副作用には注意が必要である。1 副交感神経の機能が広範に抑制される結果として、口渇、眼圧上昇、排尿障害、便秘、頻脈などの抗コリン症状が一般的に発現する。3 そのため、緑内障の患者や前立腺肥大症による排尿困難がある患者、あるいは麻痺性イレウスの恐れがある場合には、症状を悪化させる危険性があるため原則として使用が禁忌とされるか、極めて慎重な投与が求められる。2
参考文献・出典
- 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultOutputPdf/420114_1221004Q1025_2_03 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/s0330-6g.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultOutputPdf/350149_1221001X1038_1_04 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5