HEALTH WORDS / 用語解説
アンチセンス
Antisense
アンチセンスとは、遺伝子の塩基配列であるDNAやRNAにおいて、タンパク質をコードするセンス鎖に対して相補的な配列を持つ鎖、あるいはその核酸分子の総称である。1
生体内における遺伝情報の流れにおいて、タンパク質のアミノ酸配列を直接指定するmRNA(メッセンジャーRNA)と同じ向きの一本鎖DNA領域やRNA領域はセンス鎖またはコーディング鎖と呼ばれ、これと正確に対合する対の鎖がアンチセンス鎖と呼ばれる。2
分子生物学および遺伝学の分野では、DNAからmRNAが転写される際、RNAポリメラーゼはアンチセンス鎖を鋳型として利用し、センス鎖と同じ配列を持つmRNAを合成する。3
この自然界のメカニズムを応用し、特定の遺伝子の発現を人工的に抑制あるいは制御する手法として、アンチセンス法やアンチセンス核酸医薬の研究開発が広く進められている。4
人工的に合成されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、標的とする病気の原因遺伝子から作られるmRNAに特異的に結合することで、翻訳の阻害やスプライシングの異常修復、あるいはRNアーゼHなどの酵素を介したmRNAの分解を引き起こす。5
このようなアンチセンスの仕組みを利用した核酸医薬品は、従来の低分子化合物や抗体医薬ではアプローチが困難であった標的に対しても作用させることが可能であるため、難治性疾患や遺伝性疾患に対する新しい治療法として大きな期待を集めている。6
参考文献・出典
- NHGRI Genomics Education: https://www.genome.gov/genetics-glossary/Antisense ↩
- National Center for Biotechnology Information: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5198818/ ↩
- Nature Scitable: https://www.nature.com/scitable/definition/antisense-strand-293/ ↩
- 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/library/pub/kourou/R01/01_19.pdf ↩
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構: https://www.pmda.go.jp/files/000219808.pdf ↩
- 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構: https://www.amed.go.jp/news/release_20200319.html ↩