HEALTH WORDS / 用語解説
エンドモルフィンⅡ
エンドモルフィンⅡとは、哺乳類の中枢神経系において発見されている内因性のオピオイドペプチドの一種であり、強力かつ選択的にμオピオイド受容体に結合して鎮痛作用などの生理活性を示すテトラペプチドである。12
エンドモルフィンⅡは、1997年にウシの脳組織から初めて単離・構造決定された物質であり、アミノ酸配列としてはTyr-Pro-Phe-Phe-NH2という構造を持っている。12
生体内には、これと極めてよく似た構造を持つ同属のペプチドとしてエンドモルフィンⅠ(Tyr-Pro-Phe-Trp-NH2)も存在しており、両者はともに生体内で合成されるペプチドの中でも、μ受容体に対して最も高い親和性と選択性を示すものとして知られている。12
これらの内因性リガンドの発見により、従来から知られていたエンドルフィンやエンケファリン、ダイノルフィンといったオピオイド系神経伝達物質とは異なる、新たな受容体サブタイプへの作用メカニズムが詳細に研究されるようになった。12
脳内におけるエンドモルフィンⅡの局在を調べると、その分布は均一ではなく、視床下部や線条体、脊髄の後角など、疼痛の伝達や自律神経の調節、情動に関与する領域に高い濃度で存在していることが免疫組織化学的な研究によって明らかにされている。12
このような特異的な局在を示すことから、エンドモルフィンⅡは末梢からの痛覚情報が中枢神経系へ伝わるのを抑制する下行性鎮痛系の回路において、重要な神経伝達物質あるいは神経修飾物質として機能していると考えられている。12
薬理学的な実験においては、エンドモルフィンⅡを脳室内やクモ膜下腔、あるいは脊髄のくまもくこうなどに直接投与することで、モルヒネなどの医療用麻薬と同等あるいはそれ以上の強力な鎮痛効果が誘導されることが確認されている。12
また、μオピオイド受容体を介したシグナル伝達経路の活性化を通じて、鎮痛作用だけでなく体温調節、血圧や心拍数の循環器系変動、さらには呼吸運動の抑制や報酬系の活性化といった多彩な生理作用に関与していることが示唆されている。12
生体内での代謝に関しては、エンドモルフィンⅡは血液脳関門をそのままの形では通過しにくく、また血漿中や組織中のペプチダーゼといった酵素によって比較的速やかに分解されてしまうため、医薬品としての臨床応用を目指す上では代謝酵素に対する抵抗性を高めた誘導体の開発や、効率的なDDS(薬物送達システム)の構築が重要な研究課題となっている。12
このように、エンドモルフィンⅡは身体が本来持っている鎮痛システムの中核を担う重要な内因性物質であり、将来的な難治性疼痛に対する副作用の少ない新しい鎮痛薬の開発に向けた基礎医学および薬理学の分野において、現在も活発な研究が進められている。12