HEALTH WORDS / 用語解説
グルタル酸尿症
グルタル酸尿症とは、アミノ酸であるリジン、ヒドロキシリジン、トリプトファンの代謝異常によって体内にグルタル酸やその関連物質が蓄積する、まれな常染色体劣性遺伝形式をとる先天性代謝異常症の一種である。1
本疾患は主にI型とII型に大別され、それぞれ原因となる酵素や臨床症状が異なる。2
グルタル酸尿症I型は、グルタリルCoA脱水素酵素の先天性の欠損または活性低下によって引き起こされる。1 この酵素の異常により、グルタル酸および3-ヒドロキシグルタル酸が体液や組織に著明に蓄積する。2 特に脳、とりわけ大脳基底核に対して神経毒性を示すため、乳児期早期から大頭症(頭部材の過度の発育)が認められることが多い。1
I型の典型的な発症契機は、感染症や発熱などの身体的ストレスを伴う急性脳症様の発作である。2 この代謝クリーゼと呼ばれる発作を引き起こすと、線条体などの神経細胞が壊死し、不可逆的なジストニアやアテトーゼといった重度の不随意運動、筋緊張異常、構音障害などの神経学的症状が急激に出現する。1
一方、グルタル酸尿症II型は、電子伝達フラボプロテイン(ETF)またはETF-脱水素酵素の欠損によって生じる、より広範なミトコンドリアの代謝異常症である。1 II型ではアミノ酸だけでなく、脂肪酸のβ酸化も障害されるため、低血糖、代謝性アシドーシス、高アンモニア血症、さらには肝腫大や筋力低下などの多彩な症状が新生児期から乳児期にかけて現れる。2
診断にあたっては、尿中有機酸分析や血中アミノ酸分析などの生化学検査が行われ、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などを用いてグルタル酸やその代謝物の異常高値を確認する。1 また、遺伝子検査により原因遺伝子の変異を特定することで確定診断がなされる。2 多くの自治体や医療機関では、新生児マススクリーニングの対象疾患としてタンデムマス・スペクトロメトリーを用いた早期発見が進められている。3
治療法としては、I型の場合、発症前の早期診断および早期治療が予後を大きく左右する。1 食事療法として、原因物質となるリジンやトリプトファンの摂取制限を行うとともに、カルニチンの投与を行って蓄積物質の排泄を促進する。2 また、感染症などの発熱時には代謝クリーゼを予防するため、速やかに輸液や十分なカロリー補給を行うなどの急性期管理が極めて重要となる。1