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HEALTH WORDS / 用語解説

ネクチン-1

ネクチン-1とは、細胞接着分子であるネクチンファミリーに属する糖タンパク質の一つであり、免疫グロブリンスーパーファミリに分類される分子である1。 ヒトゲノムにおいてはPVRL1(poliovirus receptor-related 1)遺伝子またはネクチン-1遺伝子|NECTIN1遺伝子によってコードされており、染色体上の11q23-q24に局在している2。 ネクチン-1は、細胞同士の接着を担うアドヘレンスジャンクション(密着結合の前段階となる接着結合)の形成において中心的な役割を果たしており、隣接する細胞の表面にある同種または異種の分子と結合することで組織の構造を維持している3。 特に上皮細胞や神経細胞、線維芽細胞などの細胞膜に広く発現しており、生体の様々な器官の発生や維持に深く関与していることが知られている4。

分子構造学的な特徴として、ネクチン-1は細胞外ドメイン、膜貫通領域、そして細胞内ドメインから構成されている1回膜貫通型タンパク質である1。 細胞外領域には免疫グロブリン様ドメインが3つ存在しており、これがリガンドとの結合部位として機能する2。 また、細胞内ドメインのC末端にはPDZドメインを持つタンパク質と結合するためのアミノ酸配列が存在しており、これがアクチン骨格との結合や細胞内シグナル伝達の制御に重要な働きをしている3。 ネクチンはカドヘリンと協調して細胞接着を誘導するほか、インテグリンなどの他の接着分子ともクロストークを行って細胞の運動性や極性形成を制御している1。

生理学的な機能にとどまらず、ネクチン-1は病原体が宿主細胞へ侵入する際の受容体(レセプター)としても非常に重要な標的となっている4。 代表的な例として、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)および単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)が細胞に感染する際の主要なウイルス受容体として機能することが挙げられる4。 ウイルスのエンベロープ上にある糖タンパク質D(gD)が細胞表面に発現するネクチン-1と特異的に結合することで、ウイルス粒子と宿主細胞膜の融合が引き起こされ、細胞内への侵入が効率よく達成される仕組みになっている4。 さらに、ネクチン-1は狂犬病ウイルスなどの他のいくつかのウイルスにとっても感染経路の足場となることが示されている1。

臨床医学および遺伝学の分野においては、ネクチン-1の遺伝子異常がヒトの先天性疾患を引き起こすことが明らかにされている2。 NECTIN1遺伝子の変異は、口唇裂や口蓋裂、そして外胚葉組織の異形成を主徴とする常染色体劣性遺伝病であるマルグル・レネ症候群(Margarita syndromeまたはCLPED1)の原因となることが突き止められている2。 この疾患では、顔面の形態形成や歯、毛髪、爪などの外胚葉性器官の発達に異常が生じるが、これは発生過程における細胞間相互作用や細胞遊走においてネクチン-1が不可欠な役割を担っているためである3。 このようにネクチン-1は、基礎生物学における細胞接着のメカニズムの解明だけでなく、ウイルス感染症の病態解明や遺伝性疾患の診断・治療法開発の観点からも、極めて重要な医学的研究対象となっている4。

参考文献・出典

  1. 国立医薬品食品衛生研究所: https://www.nihs.go.jp/jhs/jjhp/31-1/03.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. 独立行政法人製品評価技術基盤機構: https://www.nite.go.jp/NITEcorpo/08press/2007/kei070628.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  3. 科学技術振興機構: https://www.jst.go.jp/pr/announce/20061213/index.html ↩1 ↩2 ↩3
  4. 国立感染症研究所: https://www.niid.go.jp/niid/ja/all-articles/surveillance/2330-idsc/iasr-topic/3515-kj3445.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5