HEALTH WORDS / 用語解説
下流因子
Downstream factor
下流因子とは、シグナル伝達経路や遺伝子発現の制御ネットワークにおいて、上流因子や受容体からの刺激やシグナルを受け取ってその下位で機能する分子の総称である。1 生物学や医学の分野において、細胞外からの情報が細胞膜上の受容体に伝達された後、細胞内のシグナル伝達系を経て標的となる分子に至る一連のカスケードの中で用いられる概念である。2
シグナル伝達の過程において、シグナルの発信源に近い側を上流、最終的な応答に近いeffectorや標的遺伝子の調節領域に近い側を下流と呼ぶ。 上流因子であるキナーゼなどの酵素によってリン酸化や活性化を受けることで、下流因子自身もまた活性化され、次の分子へ情報を伝達する役割を果たす。 このような分子の連鎖的な反応により、細胞は外界の環境変化やホルモン、サイトカインなどの刺激に対して適切な応答を誘導することが可能となる。
分子生物学や癌研究の領域では、特定のがん遺伝子やシグナル伝達経路(例えばMAPK経路やPI3K-AKT経路など)の異常がどのように細胞の増殖や生存を引き起こすかを解析する際に、下流因子の同定が極めて重要視される。 上流の分子が変異して常時活性化している場合、その制御下にある下流因子も持続的に活性化され、腫瘍の形成や疾患の発症につながることが多いためである。 したがって、創薬のターゲットとしても下流因子は注目を集めており、特定の下流因子の働きを阻害する低分子化合物や抗体医薬品の開発が進められている。
参考文献・出典
- ライフサイエンス辞書プロジェクト: https://lsd-project.jp/cgi-bin/lsdsearch.cgi?key=%8%AA%97%AC%88%%90% ↩
- 中外製薬 基礎医学用語集: https://www.chugai-pharm.co.jp/med/glossary/137.html ↩