ホーム人工遺伝子

HEALTH WORDS / 用語解説

人工遺伝子

Artificial gene

人工遺伝子とは、自然界には存在しない、あるいは化学的に合成された塩基配列を持つDNAまたはRNAの分子のことである。1 現代のバイオテクノロジーや遺伝子工学においては、DNA合成技術の飛躍的な進歩に伴い、設計図となる塩基配列をコンピューター上でデザインし、それを化学的に構築することが可能となっている。2

人工遺伝子の作製は、従来型の遺伝子組換え技術とは異なり、既存の生物から遺伝子を切り出して別の生物に導入するのではなく、アミノ酸配列や機能から逆算して、あるいは完全に新規の配列として一から核酸分子を構築する点に大きな特徴がある。2 これにより、自然界の生物が持つDNAの限界を超えた改変や、特定の目的に特化したタンパク質の効率的な産生が実現されるようになった。1

基礎科学および医学・生物学の研究分野において、人工遺伝子はタンパク質の機能解析や代謝経路の再構築、さらには新規の酵素や抗体を開発するための基盤技術として広く活用されている。2 例えば、産業上有用な物質を生産する微生物のゲノムに人工遺伝子を組み込むことで、効率的な物質生産を行う細胞工場の構築が進められている。2

医療分野における人工遺伝子の応用としては、遺伝子治療や核酸医薬品、ワクチンの開発が挙げられる。1 特に感染症に対するmRNAワクチンなどでは、標的とする抗原の情報をコードした人工的なmRNAが設計・合成され、体内で免疫応答を誘導するために利用されている。1 また、がん治療の領域においても、患者の免疫細胞に特定の人工遺伝子を導入してがん細胞を特異的に攻撃させるCAR-T細胞療法などの先端的な再生医療等製品へと応用されている。1

一方で、人工遺伝子の利用拡大に伴い、バイオセーフティやバイオセキュリティの観点から適切な管理と倫理的・法的な規制の必要性が議論されている。2 危険性のある病原体の配列などが悪用されるリスクを防ぐため、国内外の関連機関やDNA合成事業者による自主的なスクリーニング体制の構築など、安全性を担保するための枠組み作りが進められている。2

参考文献・出典

  1. 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/content/000632555.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
  2. 経済産業省: https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shokuryo_sangyo/pdf/003_s02_0p.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6