HEALTH WORDS / 用語解説
器質的疾患
Organic disease
器質的疾患とは、身体を構成する器官や組織、細胞などの構造的・形態学的な異常(病変)が直接の原因となって起こる疾患の総称である。1
医学・生物学の領域において、疾病を大別する際に用いられる基本概念の一つであり、対義語として機能的疾患が挙げられる。2
器質的疾患では、画像検査や血液検査、生検、さらには病理組織学的な検査によって、組織の壊死、炎症、腫瘍、変性、肥大、萎縮といった客観的かつ目に見える形態異常を確認することができる。1
これに対して機能的疾患は、同様の症状や身体不調を訴えて検査を行っても、現時点の医学技術では異常な構造変化や器質的変化が認められない病態を指す。1
ただし、機能的疾患として扱われていた病態であっても、その後の医学研究の進展や高精度な検査機器の開発によって、微細な組織の炎症や神経の異常といった器質的疾患としての基盤が新しく発見されるケースも少なくない。2
臨床医学の現場における診断プロセスでは、患者が訴える自覚症状や他覚的所見の原因が器質的疾患によるものなのか、あるいは機能的疾患によるものなのかを鑑別することが極めて重要となる。1
例えば、循環器領域における狭心症や心筋梗塞は、冠動脈の動脈硬化や狭窄という明確な構造的異常を伴うため器質的疾患に分類される。1
これに対し、心臓の構造や血管に異常がないにもかかわらず胸痛や動悸といった症状が生じる疾患の中には、自律神経失調症や機能性心疾患のように機能的疾患としての側面を強く持つものが含まれる。1
また、消化器領域においても、胃潰瘍や胃がんのように粘膜の欠損や悪性腫瘍の形成が確認できる病態は器質的疾患であり、内視鏡検査などで直接病変を視認することができる。1
これに対して過敏性腸症候群などは、大腸に明らかな器質的病変が見当たらないにもかかわらず腹痛や排便異常が持続するため、長らく機能的疾患の代表例として扱われてきたが、近年では腸管の微細な炎症や知覚過敏などの病態生理学的異常が注目されている。2
精神医学や脳神経外科の分野でも、脳血管障害や脳腫瘍、変性疾患など、脳実質の破壊や萎縮といった構造的異常が確認される精神障害や神経症状を器質的精神障害または器質的脳疾患と呼ぶ。1
このように、器質的疾患の概念は、現代医学における診断基準の構築や治療方針の決定、さらには予後予測を行う上で極めて基礎的かつ不可欠な医学用語となっている。2