HEALTH WORDS / 用語解説
塩酸ピリドキシン
Pyridoxine hydrochloride
塩酸ピリドキシンとは、水溶性のビタミンの一種であるビタミンB6の塩酸塩であり、生体内における多様な代謝反応において補酵素として機能する有機化合物である1。
化学式は $C_8H11NO_3・HCl$ で表され、白色の結晶または結晶性の粉末であり、においはなく、味は苦い特徴を持つ2。
水に溶けやすく、エタノールには溶けにくく、エーテルなどの有機溶媒にはほとんど溶けない性質を有している2。
生物学的には、ビタミンB6にはピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンなどの類縁体が存在し、これらは生体内でリン酸化されて主としてピリドキサールリン酸となり、アミノ酸の代謝や脱炭酸反応、ラセミ化反応などに関与する酵素の補酵素として重要な役割を果たしている3。
特にタンパク質の合成や分解、神経伝達物質の生合成、糖質および脂質の代謝において不可欠な成分であり、中枢神経系の正常な機能維持や免疫系の維持にも深く関与している3。
医薬品としては、ビタミンB6欠乏症の予防および治療のほか、口角炎、口内炎、舌炎、湿疹、接触皮膚炎、末梢神経炎、放射線障害(つわりを含む)などの改善を目的として臨床の現場で広く用いられている1。
また、 isoniazid (イソニアジド)などの抗結核薬の投与に伴う末梢神経障害の副作用を予防または軽減させるための併用薬としても重要な位置づけがなされている1。
ヒトの体内では合成することができないため、肉類、魚類、豆類、種実類、野菜類などの食事からの摂取が必要不可欠であり、不足した場合には皮膚炎や貧血、痙攣発作などの症状を引き起こすことがある3。
一般に水溶性ビタミンであるため、過剰に摂取された分は尿を介して体外へ排泄されるが、極端な大量投与が長期間続いた場合には感覚神経障害などの神経毒性の発現が報告されているため、適切な用量管理が求められる化合物である1。
参考文献・出典
- 医薬品医療機器情報提供サイト: https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3133001F1232_1_04/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- 日本薬局方 塩酸ピリドキシン: https://www.pmda.go.jp/files/000341019.pdf ↩1 ↩2
- 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版): https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf ↩1 ↩2 ↩3