HEALTH WORDS / 用語解説
毒
Poison
毒とは、生体に対して有害な作用を及ぼし、健康を損なったり生命を脅かしたりする化学物質の総称である。1 生物学や医学の分野においては、生体に直接触れたり吸収されたりした際に、細胞や組織、器官の正常な機能を撹乱あるいは破壊するすべての物質を指す。2
毒性の強さは、投与量や曝露の経路(経口、吸入、経皮など)、および生体側の要因(年齢、性別、遺伝的要因など)によって大きく変動する。 16世紀の医師であるパラケルススが「すべての物質は毒であり、用量が毒でないものを決める」と提唱したように、薬物であっても過剰な量が投与されれば毒として作用するため、薬理学と毒性学においては用量-反応関係の評価が極めて重要視される。3
毒の由来は多岐にわたり、植物由来のアルカロイドや配糖体、動物由来の神経毒や出血毒といった天然毒のほか、化学工業の発展に伴って合成された人工化合物や重金属なども含まれる。 毒物および劇物取締法などの法令においては、人に対して著しい健康被害をもたらす化学物質が毒物や劇物として厳格に指定され、製造、輸入、貯蔵、運搬、販売などの各段階において厳重な管理が義務付けられている。4
臨床医学や救急医学の現場において、毒物の摂取や暴露による中毒症状の治療は緊急を要する課題である。 中毒患者に対する初期対応としては、気道確保や循環動態の安定化といった全身管理に加え、毒物のさらなる吸収を防ぐための胃洗浄や活性炭の投与、体内に入った毒物の排泄を促進する処置が行われる。5 また、特定の毒物に対しては、その毒性を中和あるいは拮抗する解毒剤が投与されることで、生体への障害を最小限に抑える試みがなされる。6
基礎医学および毒性学の領域では、化学物質が細胞死を誘導する分子メカニズムや、遺伝子情報に対する変異原性、発がん性の有無を評価するための様々な試験法が開発されている。 これには、培養細胞を用いたin vitro試験や、実験動物を用いたin vivo試験が含まれ、ヒトの健康や生態系に対するリスク評価の根拠として広く活用されている。7
参考文献・出典
- 厚生労働省職場のあんぜんサイト: https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/kensaku/anzen50/46320.html ↩
- 国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部: https://www.nihs.go.jp/hse/jcrd/jcrd-i.html ↩
- 国立環境研究所 環境展望台: https://tenbou.nies.go.jp/environment_vocabulary/detail.php?id=3588 ↩
- 厚生労働省 毒物及び劇物取締法関連情報: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/dokugeki/index.html ↩
- 日本臨床救急医学会: https://jsem.jp/ ↩
- 日本中毒学会: https://www.jsct.org/ ↩
- 経済産業省 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法): https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kashinhou/index.html ↩