ホーム中毒物質

HEALTH WORDS / 用語解説

中毒物質

Toxic substance / Poison

中毒物質とは、生体に対して化学的または物理化学的な作用により障害や機能異常を引き起こし、健康をそこねたり生命を脅かしたりする物質の総称である。1 薬物、毒物、環境中の化学物質、重金属、天然毒など多様な形態が存在し、その作用機序や毒性の強さは対象となる生物の種類、投与量、曝露経路、代謝能力によって大きく変動する。2

中毒物質が生体に及ぼす影響は、短時間の曝露によって発現する急性中毒と、長期間にわたる低用量の曝露の蓄積によって生じる慢性中毒に大別される。1 急性中毒では嘔吐、意識障害、呼吸困難、心停止などの劇的な症状が現れることが多く、迅速な救急医療や解毒剤の投与が求められる。3 一方、慢性中毒は神経系の障害、肝臓や腎臓の機能不全、発がん性などを引き起こし、初期には自覚症状が乏しいため発見が遅れることがある。2

中毒学の分野において、ある物質が中毒物質として作用するかどうかは、投与量と反応の関係を示す用量反応関係によって評価される。パラケルススの「すべての物質は毒であり、用量によって毒か薬か決まる」という原則は、現代の毒性学においても基本概念となっている。化学物質の安全性評価では、半数致死量(LD50)や無毒性量(NOAEL)などの指標を用いて毒性の強度が定量的に評価される。4

産業現場や家庭内では、有機溶剤、農薬、洗剤、一酸化炭素などが中毒物質として健康障害を引き起こすリスクがある。1 これらの物質による中毒を防ぐため、労働安全衛生法や化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)などの法令に基づき、製造、保管、使用、廃棄に関する厳格な管理と規制が行われている。4 また、医療現場においては、誤飲や意図的な過剰摂取による中毒に対処するため、日本中毒情報センターなどの専門機関が情報提供や相談対応を行い、臨床現場での適切な治療を支援している。3

参考文献・出典

  1. 職場のあんぜんサイト:厚生労働省: https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo31_1.html ↩1 ↩2 ↩3
  2. 厚生労働省:重金属等に係る健康影響に関する検討会報告書: https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2nd-oshirase_00007.html ↩1 ↩2
  3. 厚生労働省:急性中毒標準診療ガイドライン: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000672804.pdf ↩1 ↩2
  4. 経済産業省:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に関連する情報: https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kanpou/index.html ↩1 ↩2