HEALTH WORDS / 用語解説
流行性出血病ウイルス
流行性出血病ウイルス(Epizootic hemorrhagic disease virus: EHV)とは、シカ科動物やウシなどの反芻動物に感染し、出血性疾患を引き起こすウイルスの一種である。1 本ウイルスはセドオルボウイルス科(Sedoreoviridae)オルビウイルス属(Orthoreovirus)に分類される二本鎖RNAウイルスであり、ヌカカ類(Culicoides属)などの吸血昆虫によって媒介される節足動物媒介性ウイルス(アルボウイルス)である。2
流行性出血病ウイルスの粒子はエンベロープを持たない正二十面体の構造をしており、ゲノムとして10分節の二本鎖RNAを有している。2 ウイルスの外殻を構成する蛋白質(VP2など)の抗原性の違いにより、これまでに複数の血清型が確認されており、地域や宿主によって流行する型が異なることが知られている。1
本ウイルスの主な宿主はシカ科動物であり、特に北米のオジロジカにおいては激しい出血やショック症状を伴う致死性の疾患を引き起こすことで知られている。2 ウシやヒツジなどの家畜も感染を受けるが、多くの場合不顕性感染にとどまるか、軽度な発熱や食欲不振、鼻汁、粘膜の充血などを呈する程度で回復することが多い。1 しかし、株の種類や動物の免疫状態によっては、ウシにおいても乳量の低下や歩様異常、口腔内の糜爛などの臨床症状が報告されることがある。2
伝播のメカニズムとしては、ウイルスを保有するヌカカが宿主を吸血する際に唾液を介してウイルスが体内に侵入する。1 直接接触による水平感染は基本的には成立せず、媒介者であるヌカカの生息域や活動時期に大きく影響を受けるため、季節性や気候変動による分布域の変化が流行の拡大に直結する特徴を持つ。2
診断にあたっては、臨床症状や病理学的検査に加えて、ウイルス分離、RT-PCR法を用いた遺伝子検査、およびELISA法などの血清学的検査が組み合わせて実施される。1 鑑別疾患としては、臨床的および病理的特徴が類似するチュウザンウイルスやアカバネウイルス、あるいはブルータングウイルスなどの同属ウイルスによる感染症との区別が必要となる。2
予防および対策としては、媒介昆虫であるヌカカの防除が中心となる。1 畜産農場においては、牛舎周辺の環境整備や殺虫剤の散布、防虫ネットの設置などが有効な管理手法として挙げられる。2