HEALTH WORDS / 用語解説
異物肉芽腫
Foreign Body Granuloma
異物肉芽腫とは、生体内で免疫系が分解・排除できない異物に対し、マクロファージなどの炎症細胞が集積して形成される肉芽腫性の病変である。1 組織内に侵入した異物は、通常好中球やマクロファージといった炎症を担う細胞によって処理される。2 しかし、手術用縫合糸、タルク、木片、金属片、あるいは体内で生じたケラチンや結晶成分など、物理的・化学的に極めて安定で生分解性がないか、あるいは極めて分解されにくい物質に対しては、通常の食細胞単体では排除することができない。3
このような異物が長期にわたって組織内に留まると、マクロファージ同士が融合して多核巨細胞(異物巨細胞)を形成する。1 この異物巨細胞は、巨大な異物を取り囲むように多数の核を細胞質内に配置し、異物の表面を覆うようにして貪食を試みるのが特徴的な組織像である。2 肉芽腫の内部にはマクロファージや巨細胞のほか、リンパ球や形質細胞、線維芽細胞などが混在し、病変の周囲を取り囲むように線維化が進行して結合組織性の被膜が形成される。3
臨床的には、異物肉芽腫は異物が迷入または遺残した部位に発生するため、過去の手術歴、外傷歴、あるいは注射などの医療行為が重要な問診事項となる。2 発生する部位としては皮膚、皮下組織、腹腔内、肺などが挙げられ、異物の種類や局所での反応の強さに応じて様々な症状を示す。1 多くの場合は無症状の腫瘤として見つかることが多いが、異物の周囲で慢性炎症が持続することにより、疼痛、発赤、腫脹、あるいは瘻孔形成を伴うこともある。2
診断においては、画像検査で腫瘤性病変として検出されるものの、悪性腫瘍や感染症による肉芽腫(結核や真菌症など)との鑑別診断が必要となる。3 そのため、確定診断には生検や手術によって採取された組織の病理組織学的検査が不可欠である。顕微鏡を用いた観察では、HE染色などの組織標本上で異物巨細胞の内部や周囲に原因となった異物が確認されることが多く、偏光顕微鏡を用いることで木片、縫合糸、結晶といった複屈折性を持つ異物を特異的に検出できる場合がある。1
治療方針としては、異物肉芽腫自体が異物に対する過剰な免疫応答の結果として生じるものであるため、根本的な治療は原因となっている異物の完全な外科的切除や除去である。2 症状が軽度である場合や切除が困難な部位に存在する場合は、経過観察が行われることもあるが、炎症が強く疼痛や機能障害を伴う場合にはステロイド薬などの抗炎症薬が使用されることもある。1