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HEALTH WORDS / 用語解説

精囊腺

Seminal vesicle

精囊腺とは、男性の骨盤内にある副性器の一つであり、精液の主要な成分を産生・分泌する器官である。1 解剖学的には膀胱の底面と直腸の間に左右一対で存在し、輸精管の末端と合流して射精管へと移行する構造をとっている。2

精囊腺の主な生理学的役割は、精子の栄養源および運動エネルギーとなる液体の分泌である。 精囊腺から分泌される分泌液は、精液全体の体積の大部分(およそ60から70パーセント)を占めるとされており、アルカリ性の性質を持つ液体である。 この分泌液には、果糖(フルクトース)をはじめとする糖質、タンパク質、プロスタグランジン、クエン酸などが豊富に含まれている。 果糖は精子が運動するための主要なエネルギー源として利用され、女性生殖器内における精子の生存や移動を助ける働きがある。 また、精囊腺から分泌される液体のアルカリ性は、酸性を示す女性の陰道内において精子が受けるダメージを中和し、精子の運動性を維持するために極めて重要な役割を担っている。

発生学的には、精囊腺は中腎管(ウォルフ管)の遠位部が芽出して発育することにより形成される。 その発育と機能の維持は、精巣から分泌される男性ホルモンであるテストステロンおよびその活性型代謝物であるジヒドロテストステロンの刺激に強く依存している。 したがって、内分泌系の変動やホルモン療法などは精囊腺の形態や機能に直接的な影響を与えることがある。

臨床医学的な観点において、精囊腺はいくつかの疾患の発生部位となり得る。 代表的なものとして、精囊腺の感染症である精囊炎があり、これは血精液症や下腹部痛などの症状を引き起こすことがある。 また、高齢男性に多く見られる前立腺癌などの悪性腫瘍が周辺の解剖学的位置関係から精囊腺へ浸潤することがあり、癌の病期分類(ステージ)や治療方針を決定する上で精囊腺への浸潤有無の評価は極めて重要である。 骨盤内のMRI検査などの画像診断においては、精囊腺の形態的異常や腫瘍の波及を詳細に観察することが可能である。3

参考文献・出典

  1. リサーチ・ナビ 国立国会図書館: https://rnavi.ndl.go.jp/ ↩
  2. 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/ ↩
  3. 国立がん研究センター: https://ganjoho.jp/ ↩