HEALTH WORDS / 用語解説
補酵素A合成
Coenzyme A biosynthesis
補酵素A合成とは、すべての生物に必須な補酵素である補酵素A(CoA)を、ビタミンB5(パントテン酸)を出発物質として生合成する一連の代謝経路である。1
補酵素AはアセチルCoAをはじめとするアシル基のキャリアとして機能し、クエン酸回路、脂肪酸の酸化および生合成、アミノ酸代謝など、エネルギー産生や物質代謝の中核をなす多数の酵素反応に関与している。1
ヒトを含む哺乳動物をはじめとする真核生物から細菌に至るまで、補酵素Aの生合成経路は普遍的に保存されており、一般に5段階の酵素反応を経てパントテン酸から合成される。2
合成経路の第1段階では、前駆体であるパントテン酸がパントテン酸キナーゼによってリン酸化され、4'-ホスホパントテン酸が生成される。2 このパントテン酸キナーゼ反応は、補酵素A合成経路全体における律速段階として働き、補酵素A自身やそのチオエステル体によるフィードバック阻害を受けることで、細胞内の補酵素A濃度が精密に調節されている。1
続く第2段階では、4'-ホスホパントテン酸とシステインがホスホパントテノイルシステイン合成酵素によって縮合し、4'-ホスホパントテノイルシステインが合成される。2
第3段階では、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼの作用により脱炭酸反応が進行し、4'-ホスホパンテテインが生成される。2 なお、生物種によってはこれらの反応を触媒する酵素のドメイン構成や分子構造に多様性がみられることが知られている。1
第4段階では、ホスホパンテテインアデニリルtransferase(PPAT)によって、4'-ホスホパンテテインにアデニル酸が転移され、デホスホ補酵素Aが合成される。2
そして最終段階である第5段階では、デホスホ補酵素Aキナーゼ(DPCK)がATPを供与体として利用し、デホスホ補酵素Aの3'位の水酸基をリン酸化することで、最終産物である補酵素Aが完成する。2
このように、補酵素A合成は基礎的な代謝維持に不可欠であるため、この経路に関与する酵素の異常や機能不全は、様々な疾患や代謝障害を引き起こす原因となり得る。1