HEALTH WORDS / 用語解説
酸代謝
Acid metabolism
酸代謝とは、生体内における酸(特に水素イオンや乳酸などの有機酸)の産生、利用、および排出に関する生化学的プロセスの総称である1。生体の代謝活動の維持において極めて重要な役割を果たしており、生命活動に伴って絶えず生成される酸と塩基のバランスを適切に保つための仕組みと深く連動している2。
ヒトをはじめとする哺乳類の体内では、糖質や脂質、蛋白質の代謝(異化および同化)の過程で、二酸化炭素から生じる炭酸をはじめ、硫酸やリン酸といった不揮発性酸、さらには乳酸やケトン体などの有機酸が日々産生されている3。これらの酸は生体内のpHを変動させる要因となるため、酸塩基平衡の調節機構によって厳密に管理されている4。
酸代謝の異常や過剰な酸の蓄積は、体液のpHが正常範囲よりも酸性に傾く酸血症やアシドーシスを引き起こす原因となる5。例えば、激しい運動時や組織の虚血状態においては、酸素供給の不足から解糖系が亢進し、大量の乳酸が産生される。この乳酸の産生と処理のバランスが崩れると乳酸アシドーシスが引き起こされることが知られている6。また、糖尿病のコントロール不良時にはインスリン作用の不足により脂肪酸の分解が異常亢進し、ケトン体が過剰産生されてケトアシドーシスを招く場合がある7。
このように生体内における酸代謝は、単なる老廃物の生成過程にとどまらず、呼吸器系(肺による二酸化炭素の排出)や泌尿器系(腎臓による水素イオンの排泄と重炭酸イオンの再吸収)といった多彩な臓器機能とも緊密に連携しながら、生体の恒常性を維持するための極めて動的な生体反応システムとして機能している8。
参考文献・出典
- 栄養・生化学辞典: https://kotobank.jp/word/酸代謝-72213 ↩
- 生化学 第4版: https://www.iwanami.co.jp/book/b267156.html ↩
- 標準生理学 第9版: https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/99166 ↩
- 南山堂 医学大辞典 第20版: https://www.nanzando.com/books/19220.php ↩
- 病態生理学: https://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=12241 ↩
- 内科学 第11版: https://www.bunhodo.co.jp/book/b357602.html ↩
- 糖尿病学: https://www.shinko-tsusho.co.jp/ryaku/book/isbn978-4-88002-500-1.html ↩
- 生理学テキスト 第8版: https://www.bunkodo.co.jp/book/F20200401-03.html ↩