HEALTH WORDS / 用語解説
酸素供給
Oxygen delivery
酸素供給とは、生体の肺から動脈血を介して、末梢の組織や細胞へと酸素が運搬され供給される一連の生理学的プロセスのことである。1
生体が生命活動を維持するためには持続的なエネルギー産生が不可欠であり、その中心を担う好気呼吸およびミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の過程において酸素は最終電子受容体として必須の物質である。1
一般に、全身への酸素供給量は心拍出量と動脈血酸素含量の積によって定量的に算出される。2
動脈血酸素含量は、動脈血酸素分圧、ヘモグロビン濃度、およびヘモグロビンの酸素飽和度によって決定づけられるため、酸素供給の維持には呼吸器系、循環器系、および血液の各機能が協調して働く必要がある。2
外界から肺胞に取り込まれた酸素は、拡散 (生物学)|拡散によって肺胞気から肺胞毛細血管内の血液中へと移行し、その大部分が赤血球内のヘモグロビンと結合して酸素化ヘモグロビンを形成する。1
この酸素を豊富に含んだ血液は左心房および左心室を経て大動脈へと駆出され、体循環を通じて全身の毛細血管床へと送り出される。2
末梢組織の毛細血管において、血液中の酸素分圧と組織細胞内の酸素分圧との間に生じる分圧の較差を原動力として、酸素は血管壁を透過し細胞内へと拡散していく。1
この際、水素イオン濃度指数|pHの低下、二酸化炭素分圧の上昇、体温の上昇、あるいは赤血球内の2,3-ジホスホグリセリン酸(2,3-DPG)濃度の増加といった環境変化が生じると、ヘモグロビンの酸素解離曲線は右方へシフトし、組織での酸素の解離が促進されて効率的な酸素供給が可能となる。2
臨床医学や救急医学の領域において、ショックや敗血症、外傷、あるいは重篤な呼吸不全などの病態時には、全身あるいは局所における酸素供給量が酸素需要量を下回る状態に陥ることがある。2
このような酸素の需給バランスが破綻した状態が持続すると、細胞レベルでの酸素不足を引き起こし、ATPの産生障害や乳酸の蓄積を伴う代謝性アシドーシスを惹起するため、人工呼吸管理や輸液療法、強心薬の投与などによって適切な酸素供給を維持・改善することが治療の極めて重要な柱となる。2