HEALTH WORDS / 用語解説
雌蕊
Pistil
雌蕊とは、被子植物の花の中心部に位置し、胚珠を保護し受粉および受精の場を提供する雌性器官の総称である。1
雌蕊は1個または複数の心皮が癒合して形成されており、一般的に先端側の柱頭、中央部の花柱、そして基部の子房という3つの主要な部分から構成されている。2
最先端に位置する柱頭は、花粉を受け取るための受容面であり、多くの場合、花粉の発芽を促す分泌液やクチクラ層を備えている。3
柱頭に付着した花粉は、その表面の構造や化学物質を認識され、自己不親和性などの機構によって同種の健全な花粉であるかどうかが選別される。4
選別を通過した花粉は柱頭上で発芽し、花粉管を伸ばして花柱の内部へと伸長していく。3
花柱は柱頭と子房を繋ぐ細長い茎状の組織であり、内部には花粉管が子房までスムーズに到達できるように栄養分を含んだ花粉管誘導のための組織や通道組織が発達している。2
花柱の長さや形状は植物の分類群によって多様であり、風媒花や虫媒花といった受粉の生態的適応を反映して大きく異なる特徴を示す。1
雌蕊の基部に位置する子房は、将来果実へと発達する膨らんだ部分であり、その内部には将来種子となる胚珠が1個または多数内包されている。3
子房の内部における胚珠の着生様式や心皮の配置は、被子植物の系統分類において極めて重要な形質として扱われている。4
花粉管が花柱を通り抜けて子房内の胚珠に到達すると、精細胞が卵細胞と受精を行い、受精卵は胚へと成長する。2
同時に極核と精細胞の重複受精が起こることによって胚乳が形成され、胚珠全体が種子へと変化していく。3
受精が完了した子房は植物ホルモンの作用などにより肥大成長を開始し、果皮を形成して種子を外敵や乾燥から守る役割を果たす。4
ひとつの花の中に存在する雌蕊の数は植物の種類によって異なり、1個のみの場合を単雌蕊花、離生した複数の雌蕊を持つ場合を離生心皮雌蕊と呼び、これらが合着している場合は合生心皮雌蕊と呼ばれる。1
雌蕊を構成する心皮の数や子房の位置(子房上位、子房下位など)は、植物の進化の歴史や生態系における多様化の過程を解明するための基礎的な指標となっている。2
参考文献・出典
- 植物図鑑: https://www.bgci.org/ ↩1 ↩2 ↩3
- 京都大学 植生研究室: https://www.sysbot.biol.kyoto-u.ac.jp/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- 日本植物学会: https://www.botanicalsociety.jp/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
- 東京大学 大学院理学系研究科・理学部: https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ ↩1 ↩2 ↩3