HEALTH WORDS / 用語解説
HIV-2プロテアーゼ
HIV-2 Protease
HIV-2プロテアーゼとは、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)の遺伝子によってコードされるアスパラギン酸プロテアーゼであり、ウイルス粒子の成熟に不可欠な酵素である1。HIV-2は主に西アフリカを中心に流行しているウイルスであり、1型であるHIV-1と比較して病原性や伝播率が低いとされる一方で、特有の薬剤耐性プロファイルを持つことが知られている2。
HIV-2プロテアーゼは、ウイルスのgagおよびgag-pol 遺伝子翻訳産物である前駆体タンパク質を特異的な切断部位で限定加水分解する機能を持つ1。このタンパク質分解酵素としての活性によって、不活性な前駆体タンパク質からマトリックス、カプシド、ヌクレオカプシドなどの構造タンパク質や、逆転写酵素、インテグラーゼ、プロテアーゼ自身などの酵素が切り出される。このプロセシングが正常に行われない場合、ウイルスは感染能力を持たない未熟な粒子のままとなり、宿主細胞への新たな感染サイクルを継続することができなくなる。そのため、HIV-2プロテアーゼはHIV-2の増殖サイクルにおいて極めて重要な役割を果たしている。
構造生物学的観点から見ると、HIV-2プロテアーゼは2つの同一のサブユニット(単量体)が非共有結合的に結合して二量体を形成するホモダイマー構造をとる。各サブユニットは通常99個程度のアミノ酸残基から構成されており、その活性中心にはアスパラギン酸残基が含まれており、これが触媒作用の本体となる。HIV-1プロテアーゼとは全体として約50%のアミノ酸配列の同一性を示すが、立体構造や活性部位の微細な空間的配置には違いが存在する1。この構造的差異が、薬剤耐性や阻害剤に対する親和性の違いを生み出す要因となっている。
エイズ(AIDS)の治療において、プロテアーゼ阻害剤(PI)は抗レトロウイルス療法(ART)の重要な構成要素の一つである2。しかしながら、HIV-1を標的として開発された多くの既存のプロテアーゼ阻害剤は、HIV-2プロテアーゼに対処する際には十分な阻害活性を示さないか、あるいは自然耐性を示すことが多い1。これはHIV-2プロテアーゼの活性部位のポケットの形状や容積がHIV-1プロテアーゼと異なっているためであり、薬剤が適切に結合できないことに起因する。そのため、HIV-2感染者に対する治療薬の選択肢はHIV-1感染者と比較して制限されることが多く、HIV-2プロテアーゼに特異的に結合して酵素活性を強力に抑制する新規化合物や低分子医薬品の探索、および薬剤耐性メカニズムの解明に向けた基礎研究および臨床研究が継続的に進められている1。
参考文献・出典
- J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907028114407817 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
- 厚生労働省 恵みネット: https://www.mhlw-megumi.jp/hiv/hiv02.html ↩1 ↩2