HEALTH WORDS / 用語解説
N,N-ジメチルアニリン
N,N-Dimethylaniline
N,N-ジメチルアニリンとは、アニリンの窒素原子上の水素原子2つがともにメチル基で置換された芳香族アミンの一種である。1
常温常圧では特有の臭気を持つ無色から黄色がかった油状の液体として存在し、有機合成化学において重要な中間体および試薬として広く利用されている。1
化学式はC8H11Nで表され、比重は水よりも軽く、エタノールやエーテルなどの多くの有機溶媒によく溶ける一方で、水には溶けにくい性質を持っている。
産業的には、染料、顔料、香料、医薬品、農薬などの製造原料として不可欠な化学物質であり、特にトリアリールメタン系染料の合成における塩基や原料として多用されてきた。1
また、不飽和ポリエステル樹脂の硬化促進剤としても使用されるなど、幅広い工業的分野で応用されている。
人体に対する毒性および健康影響としては、吸入、皮膚吸収、あるいは経口摂取によって中毒を引き起こすことが知られている。1
体内に取り込まれると、血液中のヘモグロビンに作用してメトヘモグロビンを生成させ、その結果としてメトヘモグロビン血症を引き起こす主たる原因物質の一つとなる。1
メトヘモグロビン血症が発症すると、血液の酸素運搬能力が著しく低下するため、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる症状)、頭痛、めまい、呼吸困難、倦怠感などの中毒症状が現れる。1
さらに、中枢神経系への影響として、錯乱、痙攣、意識障害を引き起こす可能性が指摘されている。1
液体自体が皮膚や眼に対する強い刺激性を有しており、接触した場合には皮膚炎や重度の眼障害を惹き起こすおそれがある。1
長期的な曝露や反復曝露による健康被害としても、血液系や肝臓、腎臓などの標的臓器に対する毒性が懸念されている。1
国際的な発がん性評価においては、国際がん研究機関(IARC)やその他の規制機関によってその発がん性についての評価や許容濃度の設定、作業環境測定の対象物質としての指定が行われてきた。1
そのため、製造や取り扱いを行う作業現場においては、局所排気装置の設置、防毒マスクや保護手袋、保護メガネなどの適切な個人用保護具の着用が義務付けられている。1
また、厳重な密閉系での取り扱いや、漏洩・火災時における適切な防災管理が求められる重要な化学物質である。1
環境中へ排出された場合の挙動や生態毒性についても各種のデータベースで管理されており、水生生物に対する有害性などが評価されている。1
化学物質の適正な管理を目的としたPRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)の対象物質に指定されている場合もあり、事業者による自主的な排出削減や管理体制の強化が図られている。2