HEALTH WORDS / 用語解説
Rh式血液型
Rh blood group system
Rh式血液型とは、赤血球の細胞膜上に存在する糖タンパク質や糖脂質などの抗原による血液型分類の一つである。1 ABO式血液型と並び、輸血や妊娠管理において極めて重要な臨床医学上の分類基準となっている。2
Rh式血液型の発見は1940年にカール・ランドシュタイナー(Karl Landsteiner)らによってなされ、アカゲザル(Rhesus macaque)の赤血球を用いた免疫実験に由来して「Rh」と名付けられた。1 ヒトにおけるRh式血液型の抗原は複雑であり、多くの抗原が知られているが、その中でも臨床上最も重要視されるのは「D抗原」である。2
D抗原を持つ場合をRh陽性(Rh+)、持たない場合をRh陰性(Rh-)と呼ぶ。2 日本人をはじめとするアジア系の人々においては、Rh陽性が約99%を占め、Rh陰性は約0.5%から1%程度と非常に少ない。2 これに対して白人(カウカソイド)ではRh陰性の保有率が約15%と比較的高い割合を示し、人種による分布の違いが顕著である。1
Rh式血液型の遺伝子は、第1人染色体に存在する複数近接した遺伝子座によって制御されており、C、c、D、d、E、eなどの主要な抗原に対応する対立遺伝子が存在する。1 このうち「d」とされる抗原の実体は実際には存在せず、D抗原が欠損している状態を便宜上「d」と表現している。1 これらの遺伝子は常染色体優性遺伝の形式に従って親から子へと伝達される。1
ABO式血液型とは異なり、Rh式血液型の自然抗体(抗体を持たせるような過去の感作履歴がない場合に血清中に存在する抗体)は通常ほとんど存在しない。2 しかし、Rh陰性の個人に対してRh陽性の赤血球が輸血された場合、あるいはRh陰性の妊婦がRh陽性の胎児を妊娠した場合などにおいて、免疫反応が引き起こされる。2 体内にD抗原に対する抗体(不規則抗体の一種である抗D抗体)が産生されることになり、これが大きな医学的問題を引き起こす要因となる。2
Rh陰性の患者に再びRh陽性の血液を輸血すると、強い溶血性輸血副作用(溶血性反応)が発生し、紅血球が破壊されることでショック症状や腎不全などの重篤な合併症を招くおそれがある。2 そのため、輸血療法を行う際には必ず事前の血液型判定および交差適合試験を実施し、原則としてRh陰性の患者にはRh陰性の血液製剤を選択して使用する必要がある。2
また、産科領域においては「新生児溶血性疾患(HDN)」の原因として重要視されている。2 Rh陰性の母親がRh陽性の胎児を妊娠した際、分娩時や流産・人工妊娠中絶などの際に胎児の赤血球が母体血行内に移行(母児間輸血)することがある。2 母体がD抗原に対して感作されて抗D抗体が産生されると、その後の2人目以降のRh陽性児の妊娠において、母体内の抗D抗体が胎盤を通過して胎児の赤血球を破壊し、胎児水腫や黄疸、重度な貧血を引き起こすことがある。2
このような母児間における免疫反応および新生児溶血性疾患の発症を予防するため、現代の周産期医学では抗D人免疫グロブリン製剤の投与が行われている。2 Rh陰性の妊婦に対して妊娠中や分娩後に適切な時期に同製剤を投与することで、母体内での抗D抗体の産生を抑制し、次胎以降の安全性を確保する臨床的対策が広く普及している。((厚生労働省: https://