HEALTH WORDS / 用語解説
e抗原
HBeAg
e抗原とは、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染時に産生されるタンパク質の一種であり、ウイルスのコア抗原(HBcAg)の一部がプロテアーゼによって切断され、血液中へ遊離したものである。1 B型肝炎の病態把握や治療方針の決定において、極めて重要な血清マーカーとして臨床現場で広く測定されている。2
e抗原は、B型肝炎ウイルスが宿主の肝細胞内で活発に増殖している時期に、血液中へ大量に放出される性質を持つ。1 そのため、血清中のe抗原が陽性であるということは、体内におけるウイルスの複製が非常に盛んであることを示しており、周囲への感染性(伝播性)が高い状態を意味している。2 特に母子感染の予防対策や、キャリアにおける病態のモニタリングにおいて、ウイルスの活動性を評価する指標として活用されてきた。1
持続感染の経過中において、免疫系がウイルスを排除しようとする過程や、自然経過あるいは抗ウイルス薬による治療の効果によって、e抗原が消失し、代わりにその抗体であるe抗体(anti-HBe)が出現することがある。1 この現象は「セロコンバージョン(抗原・抗体システムの逆転)」と呼ばれ、一般的にウイルスの増殖が低下し、肝炎の活動性が鎮静化して肝機能が安定する方向へ向かう重要な臨床的転換点とされている。2
しかしながら、近年の分子生物学的研究および臨床医学の発展により、e抗原が陰性であっても、ウイルス遺伝子のプレコア領域やプレコア領域変異(プレコア変異株)、あるいは基礎疾患に関連する変異(コアプロモーター変異株)を有する場合には、ウイルスが持続的に増殖し続け、慢性肝炎や肝硬変、さらには肝細胞がんへと進行するケースが存在することが明らかになっている。1 したがって、e抗原の測定結果だけでB型肝炎ウイルスの病態や将来のリスクを完全に判断することは困難であり、現在ではHBV-DNA量の測定など他の網羅的な検査結果と組み合わせて総合的に評価することが標準的な医療アプローチとなっている。2