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HEALTH WORDS / 用語解説

コンホメーション変化

Conformational change

コンホメーション変化とは、共有結合を切断することなく、単結合のまわりの回転などによって生じる分子の三次元構造(立体構造)の動的な変化を指す。1 生物学および生化学の分野においては、主としてタンパク質や核酸などの生体高分子が、その機能を発揮する過程や制御される過程において示す構造変化を意味する。2

生体内で機能するタンパク質の多くは、アミノ酸が一直線に重合した不活性な状態から、特定の立体構造へと折り畳まれること(フォールディング)で初めて固有の機能を発揮する。しかし、この立体構造は静的で固定されたものではなく、熱ゆらぎやリガンドの結合、化学修飾、膜電位の変化などをきっかけとして、柔軟にその形を変化させる。この構造の移り変わりがコンホメーション変化である。1

コンホメーション変化は、生命現象のあらゆる基本プロセスにおいて中心的な役割を果たしている。代表的な例として、酵素と基質の相互作用が挙げられる。多くの酵素は、基質が結合する前と後でその立体構造を大きく変化させる。基質が結合した際に酵素が自身の形を変化させて基質を包み込むような機構は「誘導適合モデル」として広く知られており、これにより酵素は高い触媒効率と基質特異性を実現している。1

また、受容体タンパク質やイオンチャネルなどの膜タンパク質においても、コンホメーション変化は不可欠である。ホルモンや神経伝達物質などのシグナル伝達物質が細胞外の受容体に結合すると、受容体はコンを起こして細胞内のドメインの構造を変化させ、これが引き金となって細胞内情報伝達系(シグナルカスケード)が活性化される。イオンチャネルにおいては、構造変化によってチャネルの扉が開閉し、イオンが細胞膜を通過できるようになる。2

さらに、筋肉の収縮を担うアクチンとミオシンの相互作用や、ヘモグロビンによる酸素の運搬におけるアロステリック効果も、コンホメーション変化の典型例である。ヘモグロビンは酸素分子が1つ結合するとその立体構造が変化し、残りの酸素分子に対する親和性が高まるという協同的な構造変化を示す。これにより、肺のような酸素濃度の高い組織では酸素を効率よく結合し、末梢組織のような酸素濃度の低い場所では酸素を速やかに放出することが可能となっている。1

このように、コンホメーション変化は生体分子が外部からの刺激を感知し、情報を伝達し、化学反応を進行させるための普遍的な分子メカニズムである。X線結晶構造解析や核磁気共鳴法(NMR)、クライオ電子顕微鏡などの構造生物学的技術の発展により、かつては静的なスナップショットとしてしか捉えられなかったタンパク質のコンホメーション変化を、原子レベルの解像度で時間的・空間的に追跡することが可能になりつつある。2

参考文献・出典

  1. 生化学辞典 第4版: https://mol.icems.kyoto-u.ac.jp/jlc/ ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. 蛋白質核酸酵素 関連用語集: https://www.jbsoc.or.jp/ ↩1 ↩2 ↩3