HEALTH WORDS / 用語解説
サイトメガロウイルス網膜炎
Cytomegalovirus retinitis
サイトメガロウイルス網膜炎とは、ヘルペスウイルス科に属するサイトメガロウイルス(CMV)の感染によって引き起こされる進行性の網膜炎症性疾患であり、日和見感染症の一つとして免疫不全状態にある患者に好発する。1
本症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症した患者や、造血幹細胞移植、臓器移植などの治療に伴う免疫抑制状態にある宿主において特に問題となる日和見感染症である。1 健康な免疫機能を持つ生体においてはサイトメガロウイルスは潜伏感染にとどまるか不顕性感染で経過することが多いが、細胞性免疫が著しく低下した状況下ではウイルスが再活性化あるいは新規に感染を拡げ、網膜組織へ直接的な障害をもたらす。2
臨床的な特徴としては、眼底検査において網膜の出血や黄白色斑、滲出物が認められ、しばしば「チーズとケチャップ」にたとえられる特徴的な眼底像を呈する。1 患者は初期段階では無症状であることも多いが、病変が黄斑部や視神経周辺などの視力に深く関与する領域に及び、あるいは網膜剥離を合併することで、視野障害や急激な視力低下、さらには失明に至る危険性を有している。2
診断にあたっては、詳細な眼底検査による網膜病変の形態確認に加え、眼房水や硝子体液を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法などによるウイルスDNAの検出が補助的に行われることがある。1 また、全身的な免疫状態の評価や、他の臓器へのサイトメガロウイルス感染症の合併有無を調べることも極めて重要である。2
治療方針としては、抗ウイルス薬を用いた薬物療法が中心となる。1 具体的にはガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、あるいはシドフォビルといった抗ウイルス薬の静脈内注射や経口投与、場合によっては眼内注射が選択される。2 さらに、根本的な治療および再発防止の観点から、HIV感染者に対しては抗レトロウイルス療法(ART)を導入して免疫機能を回復・維持させることが不可欠であり、移植患者においては免疫抑制剤の減量や調整が検討される。1