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HEALTH WORDS / 用語解説

造血幹細胞移植

Hematopoietic Stem Cell Transplantation

造血幹細胞移植とは、白血病や悪性リンパ腫などの造血器腫瘍や、再生不良性貧血などの難治性疾患に対して行われる治療法である。1 患者自身の造血幹細胞、またはドナーから提供された造血幹細胞を静脈内注射により移植し、患者の骨髄機能の再建を図る。2

造血幹細胞移植の歴史は古く、1950年代から動物実験および臨床応用への研究が重ねられてきた。 初期の試みでは多くの壁に直面したが、免疫学や分子生物学の進展、特にHLA(ヒト白血球抗原)の発見と型合わせ技術の向上により、移植成績は飛躍的に向上した。 現在では、血液内科領域において不可欠な根治的治療法の一つとして確立されている。

造血幹細胞は、赤血球、白血球、血小板といったすべての血球系細胞へと分化する能力を持つ幹細胞である。 通常、造血幹細胞は骨髄の中に存在しているが、特定のサイトカイン(G-CSFなど)を投与することで末梢血中へ動員させることが可能である。 また、哺乳類の胎児と母体を結ぶ臍帯血の中にも豊富な造血幹細胞が含まれており、これも移植のソースとして利用される。

造血幹細胞移植は、ドナーの由来によっていくつかの種類に大別される。 患者自身からあらかじめ造血幹細胞を採取して保存し、大量化学療法などの前処置を行った後に患者へ戻す方法を自家造血幹細胞移植と呼ぶ。1 これに対し、血縁者や骨髄バンク、臍帯血バンクを介して他者から造血幹細胞の提供を受ける方法を同種造血幹細胞移植と呼ぶ。2

同種造血幹細胞移植では、提供者の造血幹細胞を採取する方法によってさらに名称が分かれる。 骨髄から直接採取する骨髄移植、末梢血から成分採血装置を用いて採取する末梢血幹細胞移植、そして臍帯血を用いる臍帯血移植がある。2 それぞれの方法には採取に伴う身体的負担や、移植後の生着速度、合併症のリスクなどに違いがあり、患者の年齢、疾患の状態、HLAの適合度などを総合的に考慮して選択される。

移植を実施する前段階として、前処置と呼ばれる強力な化学療法や全身放射線照射が行われる。1 この前処置には、患者の体内に残存する腫瘍細胞を可能な限り死滅させることと、患者の免疫系を抑制してドナー由来の造血幹細胞に対する拒絶反応を防ぐという重要な二つの目的がある。 近年では、高齢の患者や臓器障害を有する患者に対しても移植が可能となるよう、負担を軽減した移植前処置(強度減弱前処置移植)も広く普及している。

同種造血幹細胞移植特有の重大な合併症として、移植片対宿主病(GVHD)が挙げられる。1 これは、ドナーのリンパ球(免疫細胞)が患者の身体を「異物」と認識して攻撃することで発症し、皮膚、肝臓、消化管など様々な臓器に障害を引き起こす。 GVHDには急性と慢性があり、免疫抑制薬を用いた予防や治療が不可欠である。 一方で、この免疫反応がドナー由来免疫担当細胞による残存白血病細胞の攻撃として働く現象(移植片対白血病効果 / GVL効果)も知られており、再発防止の観点からは一定の役割を果たしている。

造血幹細胞移植のもう一つの大きなリスクとして、日和見感染症を含む重篤な感染症の併発がある。2 前処置や免疫抑制薬の影響により、患者の免疫機能が長期間にわたって著しく低下するため、細菌、真菌、ウイルスなどに対する抵抗力が失われる。 そのため、無菌室やそれに準じた環境での管理、徹底した感染予防策、および適切な抗菌薬の投与が治療の成否を左右する。

造血幹細胞移植を受けた患者は、移植が成功して造血機能が回復(生着)した後も、長期にわたる経過観察が必要となる。 慢性GVHDの管理だけでなく、内分泌機能障害、二次がんの発症、生殖機能への影響など、長期フォローアップ外来などを通じた継続的な医療支援が重要視されている。 医学の進歩に伴い、支持療法やHLAタイピングの精度向上、新しい免疫抑制薬の開発が進められており、造血幹細胞移植の安全性と治療成績はさらに向上しつつある。

参考文献・出典

  1. 造血幹細胞移植ガイドライン: https://www.jsh.or.jp/data/file/women/file_1048.pdf ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  2. 国立がん研究センター: https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/index.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4