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HEALTH WORDS / 用語解説

ヌクレオチド除去修復

Nucleotide Excision Repair

ヌクレオチド除去修復とは、DNAの塩基損傷を修復する主要な機構の一つであり、紫外線照射によって生じるピリミジン二量体などのDNA損傷や、かさ高い化学物質が付加した付加体などを認識して除去する経路である。1

DNAは紫外線や環境中の様々な変異原に常にさらされており、二重螺旋の構造を歪めるような損傷を受けることがある。 このような構造異常は、細胞の転写や複製といった生命維持に不可欠なプロセスを深刻に阻害する要因となる。 ヌクレオチド除去修復は、損傷を受けた塩基を含む数個から数十個のヌクレオチドを鎖ごと切り取り、健全なDNAを鋳型にして合成し直すことで遺伝情報の正確性を維持している。1

ヒトにおけるヌクレオチド除去修復の機構には、大別して2つのサブ経路が存在する。 一つはゲノム全体でDNA損傷を監視して修復を行う「グローバルゲノムヌクレオチド除去修復(GG-NER)」であり、もう一つは遺伝子の転写が行われている最中にRNAポリメラーゼの停止を契機として作動する「転写共役修復(TCR)」である。2

GG-NERでは、XPC・HR23B複合体などがDNAの歪みを直接認識することから修復反応が開始される。 一方、TCRでは、転写複合体につまずいたRNAポリメラーゼをCSAやCSBといったタンパク質が感知し、損傷部位へと修復因子を呼び寄せる。 このように、初期の損傷認識ステップは異なっているものの、認識以降の反応過程は両者で共通の分子メカニズムを利用している。2

初期認識ののち、TFHII複合体に内包されるXPBやXPDといったヘリカーゼ活性を持つ酵素が動員され、損傷部位周辺のDNA二重螺旋が部分的に解きほぐされて開裂する。 続いて、XPAやヒト複製タンパク質A(RPA)などの因子が結合して一本鎖DNAを安定化させ、エンドヌクレアーゼであるXPF-ERCC1複合体とXPGがそれぞれ損傷部位の5'側と3'側でDNA鎖を切断する。 これにより、損傷を含んだおよそ25から30塩基のオリゴヌクレオチドが切り出されて排除される。2

切り出しによって生じた一本鎖のギャップ(隙間)は、DNAポリメラーゼ(主にDNAポリメラーゼ δやεなど)が反対側の健全な鎖を鋳型にして相補的なヌクレオチドを合成することで埋められる。 最後に、DNAリガーゼ(DNAリガーゼ IまたはIII-XRCC1複合体)がニック(切断端)を共有結合で繋ぎ合わせることにより、一連の修復プロセスが完結する。3

このヌクレオチド除去修復機構に先天的な遺伝子異常や変異が生じると、紫外線に対する感受性が異常に高まり、わずかな日光曝露でも重篤な皮膚炎や皮膚がんを発症する遺伝性疾患である色素性乾皮症(XP)が引き起こされる。 また、コケイン症候群やトリコチオジストロフィーといった、神経障害や発達遅延を伴う重い遺伝病の発症原因とも深く関わっている。2

参考文献・出典

  1. MSDマニュアル プロフェッショナル版: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/11-遺伝学/遺伝子の構造と機能/dnaの損傷と修復 ↩1 ↩2
  2. 国立がん研究センター 希少がんセンター: https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/xp/index.html ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
  3. 国立がん研究センター 遺伝子情報: https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/genetic_medicine/100/010/20160315143308.html ↩